研究課題/領域番号 |
18K07624
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
籏野 健太郎 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (50228475)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 中性子補足療法 / BNCT / PET / 腫瘍選択的ペプチド / フッ素-18 / 放射線治療 |
研究実績の概要 |
本研究ではo-carboraneをscaffoldとして考えてきた。一方、Nestorらはcloso-dodecaborateを母体に、ホウ素薬剤開発を推進している。特に、求電子的なヨウ素化反応によりI-125標識した、[(4-isothiocyanatobenzylammonio)undecahydro-closo-dodecaborate(1-)] (DABI) (Bioconjugate Chem. 2003;14:805-810) は注目される。この方法はイソチオシアン酸がペプチドのアミノ基と反応しチオ尿素構造を形成することにより、生体分子を標識することが可能となる。この反応は温和な条件で進行すると考えられ、非常に有用である。本年は、このイソチオシアン酸とモデルペプチドの反応を検討した。 12残基のモデルペプチド (ARGIKGIRGFSG)とイソチオシアン酸フェニルのホウ酸緩衝液(pH9.2)中の反応を行った。37℃、60分反応を行ったところ、47%の収率で反応は進行した。ここで一等量のイソチオシアン酸フェニルを追加しさらに120分反応したところ、60%の一置換体ともに、18%の二置換体が生成した。Ranaらによるとイソチアン酸によるアミノ基の修飾は、pH7で行うことで、N末端アミノ基にのみ反応し、Lysのεアミノ基への反応しないよう制御できる(Bioconjugate Chem. 1990;1:357-362)。目的に応じ条件を変更することで反応が最適化されることが示唆された。次年度でこれらの方法の標識合成法、薬剤デザイン上の優劣を検討し、がん特異的ペプチドを用いたPET診断薬/BNCT治療薬を開発し、Theranositicsの実現を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イソチオシアン酸誘導体のペプチドとの反応性を検討するため、12残基のモデルペプチド (ARGIKGIRGFSG)とイソチオシアン酸フェニルのホウ酸緩衝液(pH9.2)中の反応を行った。37℃、60分反応を行ったところ、47%の収率で反応は進行した。ここで一等量のイソチアン酸フェニルを追加しさらに120分反応したところ、60%の一置換体ともに、18%の二置換体が生成した。Ranaらによるとイソチアン酸によるアミノ基の修飾は、pH7で行うことで、N末端アミノ基にのみ反応し、Lysのεアミノ基への反応しないよう制御できる(Bioconjugate Chem 1990;1:357-362)。目的に応じ条件を変更することで反応が最適化されることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
概要でのべたDABIは、ammoniaundecahydrocloso-dodecaborate(1-) とカルボニル化合物の還元的縮合により得られるアミノベンジル体よりイソチアン酸を合成し(Inorg. Chem. 1999;38:5887-5893)、さらにこれのクロラミンTによる酸化的ヨウ素化によりI-125標識している(Bioconjugate Chem. 2003;14:805-810)。したがって、当初計画していたカルボラン類同様closo-dodecaborate誘導体も求電子的フッ素化剤であるF-18標識F2によって標識可能と考えられる。そこで、次年度の課題はアミノ側鎖あるいは当初考えられたカルボキシル基を有する、carborane類ないしcloso-dodecaborate類の実際的な製造法の確立である。これを確立し、がん特異的ペプチドの標識を行って方法論を実証したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はモデルペプチドを用いた合成法検討を行ったので、高価なカスタムペプチドを購入しなかったため。次年度はがん特異的ペプチドの製造を外注する。
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