研究課題
今年度は、標識前駆体としてケイ素置換D-フェニルアラニン残基を含む環状ランダムペプチドライブラリー(5残基)を調製することを目的として以下の研究を実施した。1)研究コンセプトの妥当性を検証するために、αvβ3インテグリンに特異的に結合する環状RGDペプチド(cyclo[Arg-Gly-Asp-D-Phe-Lys)をモデルペプチドとし、その合成法を検討した。まず、ビルディングブロックとなるBpocアミノ酸(Bpoc=2-(4-biphenylyl)-2-propyloxycarbonyl)の合成方法を検討した。文献法に従いTriton Bを塩基としてアミノ酸のBpoc化を試みたが総じて収率は低く、Pheに至っては反応が全く進行しなかった。そこで、塩基をテトラメチルグアニジンに変更したところPheのBpoc化反応は進行し、中程度の収率で目的とするBpoc-AAを合成することができた。次に、研究計画に従いBpoc-AAを用いて環状ペプチドが合成できるか確認した。固相担体には環状ペプチドの合成に適したオキシム樹脂を選択した。アミノ酸伸長により得られた鎖状ペプチド樹脂に塩基を作用させて環化と同時に樹脂からの切り出しを行い、目的とする環状RGDペプチドを効率よく得ることができた。2)ペプチドスクリーニング法の評価における環状RGDペプチド以外のスタンダード物質の候補選定を行った。代表者らが研究してきたハロゲン含有疎水性環状ペプチドSA-I(cyclo[Phe(4-I)-Leu-MeLeu-Val-Leu]、MeLeu=N-methyl-L-leucine)が培養乳がん細胞MDA-MB-231に対して細胞毒性を示すことに着目し、細胞内外におけるSA-Iの標的探索を行った。その結果、SA-Iは、アデノシン受容体(A2B受容体)の発現を効果的に阻害していることを見出した(論文発表)。
3: やや遅れている
当初研究計画において提案した研究コンセプトの方向性が正しいことは確認でき、目的の一部を達成することができた。しかし、合成条件検討で予想外に時間がかかり、18種類のビルディングブロック全てを合成することができなかったため、ライブラリー合成には至らなかった。そのため、進捗はやや遅れていると判断した。
次年度以降は、前年度に確立した合成法を用いて前駆体ペプチドライブラリーを調製する。その後、Br-77で標識したRI標識ライブラリーを作成してスクリーニングの実証実験に供する.具体的には腫瘍の浸潤転移に関わるαvβ3インテグリンを高発現している培養細胞株を用いてこれに特異的に結合する環状RGDペプチドを選別できるか検証する。また、培養乳がん細胞に効果を示すSA-Iについても標的分子の同定ができたので、スクリーニング方法評価における標準物質として使用する。
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