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2018 年度 実施状況報告書

薬剤増感による粒子線がん治療法の物理生物学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K07628
研究機関群馬大学

研究代表者

島田 博文  群馬大学, 重粒子線医学推進機構, 助教 (10414575)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード重粒子線治療 / 炭素イオン線治療 / 放射線化学
研究実績の概要

初年度は本研究に関する調査,活性酸素種を同定するための基礎的なデータの収集を行った. まず,PDT用薬剤の粒子線励起による放射線化学的及び放射線力学的性質の基礎的なデータを取得し,本治療システムで腫瘍組織を死 滅させる役割を果たす活性酸素種の発生を定性的に評価した.
基礎的なデータの取得のため,サンプルは濃度分布が均一な水溶液中において粒子線を照射した.PDT用薬剤には加齢黄斑変性症に使用されているビスダイン(ベルテポルフィン)を採用し,蛍光プローブは一重項酸素用としてSinglet-Oxygen Sensor Green,活性酸 素(主にOHラジカル)用としてHydroxyphenyl Fluorescein,ラジカル捕捉剤として,アジ化ナトリウム,一重項酸素の長寿命化用と して重水をそれぞれ採用した。PDT用薬剤の濃度は薬剤の標準投与量15 mg,循環血漿量基準値48 mL/kg,仮想体重60 kgとした時の最 高血中濃度5.2 x 10-3 mg/mL(ビスダイン: 7.2 x 10-6 M)を用いて照射実験を行った.その後,照射サンプルの光励起による蛍光測定を行い,PDT用薬剤の有無によって活性酸素種の発生が促進されていることが確認できた.
続いて,これらの知見をもとに,肺がん上皮細胞(A-549)とビスダインを用いて,X線照射(5Gy)を行ったところ,ビスダインを 添加していないコントロール群に比べ,細胞の生存率が低下し,放射線照射と光増感剤との併用により,殺細胞効果が向上することが見出せた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

平成30年度は,予定通りの回数の重粒子線(炭素イオン線)ビーム照射実験を行うことができなかった.添加する薬剤についても, それぞれ1種類ずつしか確認することができなかった.
その理由として,1)大学業務の一つである群馬大学重粒子線医学センター治療業務が想定以上であったため,2)それに伴いマシンタイムの十分な確保ができなかっため,再現実験や他の薬剤を使用した照射実験を行うことができなかった.
また,群馬大学重粒子線医学センターは,基本的には治療施設であるため,初年度における実験環境を早期に立ちあげられなかったことも,遅延の理由としてあげられる.

今後の研究の推進方策

平成31年度は,まず平成30年度に取得予定であったうちの,実施・取得できなかったデータの取得を行う.次に,粒子線の線量及びP DT用薬剤濃度を変化させ,薬剤濃度及び照射線量と活性酸素種の発生量の相関関係を明らかにし,腫瘍組織に有効である活性酸素種が 最も効率良く発生する条件を探索する。照射線量及び薬剤濃度は実際の治療時よりも低線量・低濃度で実験を行い,活性酸素種の発生 量を系統的に評価する.
また,腫瘍細胞への粒子線照射実験は,PDTが有効とされている扁平上皮がんを用いて行う.肺の扁平上皮がん細胞を培養し,細胞数 ,PDT用薬剤濃度,照射線量,線質を変化させ,粒子線照射後にコロニーアッセイ法などの致死効果判定を行い,より致死効果の大き い条件の探索を行う.肺の扁平上皮がんの細胞実験の結果に基づき,他の腫瘍細胞による同様な実験を行い,本方法が適した腫瘍の探 索を行う.粒子線治療及び光線力学的療法よりもさらに低侵襲性な治療システムが構築可能であるかどうか検討を行う.

次年度使用額が生じた理由

(理由)平成30年度、本課題以外の最もエフォートの高い業務である診療の業務量が予想以上に著しく増加し、そのエフォートが非常に増大し たため、本課題のエフォートを下げざるを得なくなりました. そのため、今年度に実施する予定であった研究計画のほとんどについて、予定通りに遂行することができず、その結果未使用額が生じました.
(使用計画)次年度使用が生じた理由が,研究計画の再検討によるものではないため,平成31年度の研究実施計画に基づいて,実施する予定である.

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公開日: 2019-12-27  

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