研究課題/領域番号 |
18K07631
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
平野 祥之 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 准教授 (00423129)
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研究分担者 |
余語 克紀 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 助教 (30424823)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | DNAの放射線損傷 / 放射線シミュレーション |
研究実績の概要 |
実験については、バイオ実験については専門外であるため、ゼロから環境を整えるのに時間を要したがDNAの電気泳動ができるようになった。研究の目的の一つとしてDNAの損傷をラマンスペクトルで特徴付けることだが、ある程度はすでに研究されており、複数の先行研究により、損傷とラマンスペクトルの関係を見つけることができた。当該研究では、まず切断箇所の様子が明確になっている制限酵素による切断のラマンスペクトルを確認しようと試みたがうまく観測できなかった。おそらく電気泳動で分離した後、該当箇所を取り出す際の手続きに問題があったと考えられる。バイオの専門家に改善策の教示を受ける予定である。またはマイクロチップ電気泳動を利用して分離後、直接分光器で観測する方法を検討している。 一方シミュレーションについては、DNAの直接効果に加えOHラジカルによる間接効果のモデルを組み込み両方の効果を考慮した。さらに文献を参考にして酸素濃度を考慮したモデルをシミュレーションに取り入れ、DSB/SSB比について文献値とほぼ一致させることができた。これにより粒子種やLETの違いによる損傷具合の予測を調べることができる。しかしこのシミュレーションについても、多くのモデルパラメータがあり、パラメータの値の妥当性について検討しなければならない。平行して分子動力学計算をはじめたので、損傷したDNAがどのような形で安定するのかについて調べる予定である。こちらについては分子動力学の専門家の指導を受けて進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
主に、教育関連の仕事にエフォートの多くを費やしたためである。新しい講義を複数担当することになり、その準備に苦労を要した。また複数人の研究者の研究分担者にもなっておりそれらの研究にも多くの時間を割く必要があった。このように研究と教育および共同研究とのエフォートのバランスが予定していた配分から大きく崩れ、自身の研究以外に尽力することになったことが原因である。
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今後の研究の推進方策 |
新規講義の準備は、ほぼ済んだため、教育へのエフォートを計画していた配分に下げ、研究の時間に割り当てる予定である。シミュレーションについては順調に進んでいるので、とにかく実験に重点を置いて進めていきたい。不慣れなバイオ実験を行う機会が多いため、バイオ実験の専門家である機器をお借りしている担当者等のアドバイスを積極的に伺い進めていく。具体的には損傷DNAのラマンスペクトルを観測するために、アガロース電気泳動での分離ではなく、マイクロチップあるいはマイクロキャピラリー電気泳動装置を利用することで、損傷DNAの抽出作業をせず、直接分光器で観測することである。他にも、分光器をお借りしている施設にはNMRも所有しているため、NMRによる損傷の特徴づけについてお検討したい。しかし新型コロナウイルス感染拡大にともなう他施設での実験自粛が研究の進捗に影響しないかが不安要素として残る。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に遅れが生じているため、購入予定の物品や薬剤をまだ購入できていないためである。また購入予定の物品について、他研究室からお借りすることができたため、その分余裕ができたこともある。
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