研究課題/領域番号 |
18K07635
|
研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
畠中 正光 札幌医科大学, 医学部, 教授 (40253413)
|
研究分担者 |
山 直也 札幌医科大学, 医学部, 講師 (20404709)
小野寺 麻希 札幌医科大学, 医学部, 助教 (20404717)
杉田 真太朗 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (50451670)
西舘 敏彦 札幌医科大学, 医学部, 助教 (80404606)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 直腸がん / MRI / Conductivity / IVIM |
研究実績の概要 |
平成30年3月9日に札幌医科大学附属病院臨床研究倫理審査委員会に対し、本研究の申請を行い、平成30年4月12日に札幌医科大学附属病院病院長の承認を得た後、本研究を開始した。現時点までで26例の登録を行い、5例(1例は上手くconductivityを計算できていない)のconductivity計算用のMRI画像の解析を行った。この時点では結果についての解析を行うには十分なデータ量は集まっていないが、直腸病変は空気と接しているためにsusceptibilittyの影響を強く受けるためなのか、データ自体のばらつきが当初の予想以上に大きい印象であり、今後この点の克服に注力する必要があると感じている。 患者さんは動かさず、同一装置・同一撮像方法で2回連続して撮像された3D steady-state free presession (SSFP) 画像から計算した各voxelのconductivityを直線回帰してみると相関係数は0.16~0.77と大きくばらついていた。同時に撮像したintrovoxel incoherent motion (IVIM) 法でのtrueD (D) は0.72~0.97、perfusion fraction (f)は0.29~0.93とconductivityと比較するとD値は非常に高い再現性を、fも比較的高い再現性を示した。Perfusion (D*)はvoxel単位では計算が困難であった。体部領域では、低b値領域では信号強度のばらつきが大きくD*値は計算困難であることは今までの知見と矛盾しない。Conductivity値の再現性を高めるためには計算の元画像である3D SSFP画像の再現性を高める必要があるが、臨床検査のスケジュールにこれらの撮像を追加しているので検査時間の延長は難しく対処法を検討している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
札幌医科大学附属病院臨床研究倫理審査委員会に研究許可申請を提出し、平成30年4月12日付で研究承認を得た後、本臨床研究を開始した。直腸病変の精査のために当院にて3T MRI装置で骨盤部のMRI検査を行う患者のうち、同意書に署名頂いた患者に対し、IVIM法のためのDWI画像を2回、conductivity計算用の3DSSFP画像も2回撮像し、Fujifilm Medical社製のVINCENTを用いて病変領域のregion of interest (ROI)を設定しD・f・D*の計算を行った。Conductivity値に関しては、匿名化したDICOM format画像を研究協力者であるDr. Ulrichに送ってconductivity画像を作成していただき、再度VINCENTを使って病変部のconductivityの解析を行った。現時点で26例の画像を取得しているが、conductivityに関しては4例、IVIMに関しては5例の解析を行った。Conductivityに関して、症例1(1st/2nd)では1150/3508 mS/m、症例2では-168 /-177、症例3では 1111 /381、症例4では938/659と値が非常にばらついており、改善の必要性を感じている。IVIMに関しては、症例1のDおよびf(1st/2nd)は1.37 /1.52 mm2/s、0.054/0.030、症例2は0.97 /0.96、0.092 /0.108、症例3は0.73 /0.71、0.072 /0.082、症例4は0.72/0.75、0.084 /0.129、症例5は0.86/0.96、-0.012/0.074であった。fについてはマイナスの値を取るケースもあり計算方法に改善の余地があるが、Dは値のばらつきも少なく高い再現性を示し信頼性が高いと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
Echo-planner法を用いるDWIの場合、直腸のように空気が近接しておりsusceptivility artifactが生じやすい臓器では歪みが生じてしまう。しかし、再現性確認のために2回連続して撮像したDWIでは、両者に同様の歪みが生じているためであろうと思われるが予想以上に再現性は高く、画像が歪むことによるROI設定の難しさは残るがデータ自体の信頼性は十分高いと考えられた。ただし、D*に関しては、低b値での信号強度のばらつきが大きいためvoxelごとの値を計算することはほぼ不可能と考えられる。 Conductivity計算の元画像である3D SSFPは歪みのない画像であるので、conductivity値自体も高い再現性を期待したが、現在までの解析の範囲では当初の予想に反してIVIMのmetricsよりも明らかに低い再現性となった。この点を改善する必要があると考えDr. Ulrichとも議論したが、彼のデータではphantomや頭部領域のconductivityの再現性は高かったとのことであったので直腸領域の特殊性に主原因があると推定される。試みとして隣接する前立腺のconductivityも計測してみた。詳細な検討は行っていないが直腸に比してデータの再現性はかなり高い印象であったので上記の可能性は高いのではないかと考えている。 まず考えられる対処法としては元画像である3D SSFPの繰り返し回数を上げることである。しかし、臨床検査にこの撮像を加えているので繰り返し回数を増加させることによる撮像時間自体の延長は病院の検査スケジュール上、難しい。データを詳細に観察してみると、比較的病変が大きい症例では再現性が高い傾向にあるのでこういった症例に絞ってconductivityを活用する方法も検討する必要があるかもしれないと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
学会に参加し多くの関連情報を集める予定であったが、学会で発表するまでには至らなかったので本年度はあまり学会に参加することができず、学会参加のための旅費を中心とする支出が少なかったことが原因である。次年度は、日本医学放射線学会および国際磁気共鳴医学会に積極的に参加し、専門家との議論や問題点の共有等をより盛んにし、今までの研究で明らかとなった問題点の改善に取り組んでいきたいと考えている。
|