研究課題/領域番号 |
18K07638
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 弦 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80279182)
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研究分担者 |
増井 浩二 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20783830)
山崎 秀哉 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50301263)
武中 正 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80626771)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 放射線皮膚炎 / 乳癌術後 / 色素 |
研究実績の概要 |
既存のデータを用いて乳がん術後照射例を対象にdose volume histogram (DVH)の後方視的解析を行い放射線皮膚炎のリスク因子は、V 5(全身)およびV 40(皮膚容量)が指標となることを明らかにした。共同研究者の武中正が国際誌に論文報告した(Correlation Between Dosimetric Parameters and Acute Dermatitis of Post-operative Radiotherapy in Breast Cancer Patients. In Vivo. 2018;32(6):1499-1504.)。
また、色彩色素測定器を用いて異なる標準的照射法(低分割(Hypo)および従来分割(Conv))における皮膚反応の定量評価を行い、最大投与量は色の変化の有用な予測因子であることを明らかにした。共同研究者の山崎秀哉が国際誌に論文報告した(Comparison of radiation dermatitis between hypofractionated and conventionally fractionated postoperative radiotherapy: objective, longitudinal assessment of skin color. Sci Rep. 2018 Aug 17;8(1):12306.)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初期経験の数例について画像解析ソフトOpenCV(LGPL/BSDLライセンス)を用いて,デジタルカメラ画像のinsilico解析を行った。放射線初回と治療中任意の時点でのデジカメ画像からL*とa*の色調を解析するデジカメ撮像同日に行った分光測色計による皮膚の色調変化の実測値との整合性があわず、すなわち実測値とデジカメ画像からの色情報とのキャリブレーションが困難を極めている。したがって現時点においては、皮膚炎の程度予測(CTCAEによるgrading)は当初に推察していたよりも容易ではないと判断しており、初年度の研究計画に挙げた検証ソフトの開発までにはいたっていないのが現状である。 皮膚炎のGradingを学習(教師あり学習)させ実用化にむけたソフトの最適化を行うためには、症例数を増やすことが必須であり、今後もひきつづき再検討を予定しているが、院内の放射線治療機器の入れ替えなどにより、乳癌術後照射例を集積ができない時期が数か月続き、このことも研究の遅れの原因ともなっているいる。
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今後の研究の推進方策 |
当初はキャリブレーションの際に健側乳房(放射線治療がまったく照射されていない皮膚)をコントロールとし、相対的に患側乳房(照射されている乳房)の色調変化の差異の計測を検討していたが、初期解析ではこの方法では得られる結果に矛盾が生じた。具体的な例を挙げると、照射が継続しているにも関わらず、皮膚炎の程度が経時的に軽減するなどまったく逆の変化が数値として現れる症例も経験した。したがって、従来の測定方法で正確な評価を行うのは問題が多いことが示唆される。このため、今後は照射前ならびに照射中のデジカメ画像撮像の際には、白板を患者にもってもらったうえでデジカメ画像を撮像し、色情報の解析の際には、健側乳房の皮膚のみならず、デジカメ画像内に撮像された白板をもコントロールとすることでより正確な皮膚色調変化を評価していきたいと考えている。 繰り返す衣服の着脱による皮膚と衣服の接触が皮膚発赤の増加の一因となり、放射線治療による以外の因子も測定値のエラーにつながると判断される。したがって衣類を最初に脱衣した直後の放射線照射室においても分光測色計による実測を行う方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初期経験の数例について画像解析ソフトOpenCV(LGPL/BSDLライセンス)を用いて,デジタルカメラ画像のinsilico解析を行ったが、当初の予想以上に分光測色計による実測値とopenCVで得られた結果の乖離が甚だしかったため、初年度の研究計画に挙げた皮膚炎の程度予測(CTCAEによるgrading)を行うソフトの開発にいたっていないのが大きな理由である。本来、初年度のソフト開発に多大な費用が計上される予定であったが、以上のような理由で、開発費用の次年度以降にもちこしとなっている。症例蓄積を経ながら、今後もひきつづきソフト開発に邁進する。
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