研究課題/領域番号 |
18K07638
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 弦 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80279182)
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研究分担者 |
増井 浩二 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20783830)
山崎 秀哉 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50301263)
武中 正 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80626771)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 放射線皮膚炎 |
研究実績の概要 |
温存術後乳癌症例について、術後照射中の患者において市販のデジカメを用いて、毎週経時的に皮膚の変化を撮像し、同時に色彩色素測定器を用いて皮膚の色調について客観的評価(皮膚実測値)を行った。前年度、インハウスのソフトウェアで、皮膚イメージと実測値との値に整合性がみられなかったため、今回は症例数を増やし、測定する部位に一貫性をもたせ(デジカメ写真における乳房の影の影響を避ける目的で、測定部はA区域ならびにC区域に限定)、再検討した。詳細は以下の如くである。 1.各症例のデジカメ画像について、画像編集フリーソフトGIMPにより,A, C区域を25×25へクロップし,パッチを作成した.2.インハウスソフトを用い,RGB系→L*a*b*系へと変換した.3.パッチ内のノイズの影響を減らすため,パッチ毎の中央値を抽出した.(L*, a*, b* それぞれ)。4. 実測L*a*b*成分と2.の画像L*a*b*成分との相関について評価をした. 照射側乳房と、非照射側乳房についてそれぞれ代表的照射領域(A、C区域の色)の色彩データを抽出し、これら皮膚イメージと皮膚実測値と経時的変化の相関について、AIで解析した。なお、色彩値はCIE(国際照明委員会)が定義したL*a*b*表色系で評価した。結果、L*a*b*はR2値がそれぞれ、0.28、0.25と相関が乏しく、一方でb*のそれは0.54とある程度の相関が得られることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
デジカメ画像からの色データ抽出は、当初に推察していたよりも容易ではなく、特にデジカメからの皮膚イメージのデータにばらつきがみられた。インハウスソフトにて特徴データを抽出し、実測との整合性について検討し、イメージとの相関はb*にみられたが、実測値を用いた先行研究の結果ではa*が皮膚炎の程度をよく反映していることがわかっており、この乖離のため外注のソフト開発にいたっていないのが現状である。
症例数を蓄積し実用化にむけたソフト開発を行うために、今後もひきつづき研究を行う。なお、新コロナウイルス蔓延の影響などにより、症例集積が思うようにいかないことも研究の遅れの一因ともなっている 。
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今後の研究の推進方策 |
以前の我々の実測値を用いた研究では、a*値の経時的変化が皮膚炎予測に有用な因子であったが、イメージと実測値の相関はb*が有望と矛盾する結果が出た。 従来の測定方法で正確な評価を行うのは問題が多いこと が示唆される。現在はデジカメ画像撮像の際には毎回、白板を患者にもってもらったうえでデジカメ画像を撮像し、白板の色彩データをコントロールとすることでより正確な皮膚色調変化をとらえられないかを評価している。これで不十分であればAIの一種であるCNN (Convolutional Neural Network) を用いた検討を行う予定です. また、イメージだけではなく、照射中の皮膚水分量など全く違った角度から皮膚炎予測の糸口を探り、研究を推進する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予想以上に分光測色計による実測値とイメージで得られた結果の乖離が大きく、ソフト開発まで いたらないのが大きな理由である。ソフト開発に多くの資金投入を予定しているが、今後はデジカメのイメージ岳ではなく、皮膚保湿(水分量)や皮膚硬度等を計測する機器を購入し、色彩以外の新しい視点も追加した研究を行う。 放射線が皮膚に与える影響についてさらに多角的に精査し、放射線皮膚炎の継時的変化の解明と重症度予測が可能となるよう研究に邁進したい。
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