研究課題/領域番号 |
18K07641
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研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
山本 文彦 東北医科薬科大学, 薬学部, 教授 (40253471)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 分子イメージング / ラジオセラノスティクス / 放射標識 / 腫瘍 / マウス / ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
生体内安定性と腫瘍認識能の向上を目指して、ラクトソーム表面への機能性官能基付加を行うドラッグデザイン戦略の妥当性、ラジオセラノスティクスとしての臨床適用を目指した基礎検討を引き続き行った。 「機能性ラクトソームの創製と放射性イメージングプローブとしての基礎評価」では、葉酸修飾率が100%の粒子(100%FA体)、10%の粒子(10%FA体)、葉酸非修飾粒子(0%FA体)それぞれについて、葉酸受容体発現細胞(KB)と対照細胞における2時間後の結合親和性と細胞への取り込みを比較した。100%FA体は両腫瘍への集積は低く差はなかった。10%FA体はKBへの集積は高くKBに対するKd値が38.36 nMでBmax値が2.51 pmol/mgであり、100%FA体より10%FA体の方が低濃度でも高い親和性により飽和性のある結合をすることが明らかとなった。このことから葉酸受容体に対する親和性かつ飽和性のある結合を示すことが示唆された。肝臓など細網内皮系への取り込みは、0%FA体が最も低く100%FA体が最も高かった。以上のことから、ドラッグデザイン戦略は妥当でありステルス性をある程度保持したまま葉酸受容体認識能を向上させることが可能であると考えられる。内包放射能の安定性を評価する基礎データも得た。 「放射性標識ラクトソームの脳腫瘍イメージングの可能性評価」では、In-111 標識A3B 型ラクトソームのモデルマウス生体内動態を調べた結果、リンパ節への投与放射能の集積が認められた。また、ラクトソームの脳腫瘍への分布メカニズムとして、血液脳関門破綻による分布とリンパ液を介した分布の2通りの可能性があることを示したほか、投与放射能が赤血球を主とする血球成分や骨髄に高い割合で分布するなど新たな知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
機能性ラクトソーム創製評価で先行して葉酸修飾体の評価をはじめたが、他の機能性分子導入の妥当性予測にも役立つ有用な知見が得られた。このため、葉酸修飾体評価に的をしぼってさらに評価検討を進めていくことが重要である。 In-111標識ラクトソーム評価は、脳腫瘍モデルを用いた評価が一定の結論に到達しつつあるが、派生してラクトソームの性質としての新たな知見が得られた。将来の内用療法実用化やラジオセラノスティクス開発に向けた重要な情報と捉えている。
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今後の研究の推進方策 |
生体内評価時に比較するための内包型標識ラクトソームの内包放射能の基礎データは得られたが、本体標識型ヨウ素標識ラクトソームの精製法と安定供給が依然課題である。ドラッグデザイン評価のデータが参考になるものもあるので、修飾位置が本体標識型ヨウ素の標識部位と同じである葉酸修飾ラクトソームの検討を優先させていく。具体的には脳腫瘍など他の腫瘍への集積やステルス性保持、安定性評価等を検討する。 In-111標識ラクトソーム評価については、A3B型の脳腫瘍集積評価については一定の結論を得たが、ラクトソームの知見として新たな知見も得られたのでさらに治療器材としての検討を行っていく予定である。特に一般にAB型ラクトソームの腫瘍集積性のほうが高いので、ラジオセラノスティクスへの展開を見据えたIn-111標識AB型ラクトソームの検討を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
成果発表のための学会参加を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため学会開催が中止となり、旅費および宿泊分の執行ができなかった。今年度は、予定よりも学会成果発表の機会を多く計画しており、執行する予定である。
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