研究課題/領域番号 |
18K07643
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
町田 治彦 杏林大学, 医学部, 准教授 (70439834)
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研究分担者 |
横山 健一 杏林大学, 医学部, 教授 (20383680)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 超高精細CT / 逐次近似再構成 / 高空間分解能 / 被ばく低減 |
研究実績の概要 |
今までのCTに比べてはるかに高い空間分解能(解像度)を有する超高精細CTに逐次近似再構成法を併用することで、非常に微細な構造や病変を高画質で描出できるので、さまざまなCT検査で大幅な診断能の向上とX線被ばくの低減が期待されている。本研究では、脳、頭頚部、体幹部、骨関節などの領域で超高精細CTと逐次近似再構成法の併用がもたらす画質の改善と被ばくの低減を検討し、その臨床的有用性を解明する。 平成30年度は頭部CT血管造影では脳動脈穿通枝、側頭骨CTでは中耳・内耳の微細構造、胸部CTでは仮想気管支鏡、腹部CTでは微細動脈分枝や胆管・膵管などを主な対象として、超高精細CTと逐次近似再構成法を併用することでこれらの描出能が従来に比べて有意に改善することが確認できた。これらの成果を国内外の学会・研究会で積極的に発表し、招待講演や総説執筆も行っている。仮想気管支鏡の成果については実際の気管支鏡検査のナビゲーションとして、検査の効率化や診断能の向上につながるため有用と考え、すでに原著論文を投稿中である。側頭骨CTの成果についても中耳・内耳疾患の診断、さらにはこれらの疾患の治療効果・合併症の評価などに有用と考え、論文作成を進めている。その他の成果もまもなく論文化していく予定である。特に、頭部CT血管造影の成果は、脳外科手術における重篤な合併症を回避するためにも有用と考えている。 また、側頭骨CTや体幹部CTでは合理的な被ばく低減もすでに検討を進めており、平成31年度に学会・研究会で発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の予定項目として、超高精細CTと逐次近似再構成法を併用し、① 脳CT血管造影で脳動脈穿通枝の描出能を向上するための検査法の最適化を検討すること、② 体幹部CT血管造影での末梢血管の描出能の改善とその臨床的有用性を検討すること、③ 頭頚部、胸部、骨関節CTでの被ばく低減を考慮した画質の改善とその臨床的有用性を検討すること、を挙げている。 このうち、①における検査法の最適化のためのファントム実験にあたり、現在はファントムの立案段階であり、MRIにも対応可能なファントムを考慮している。②において、冠動脈CTは冠動脈ステント留置術後症例のステント内再狭窄の診断に有用と考えられるが、当施設ではそのような検査の依頼が多くないことが判明した。また、③において、骨関節CTによる微細骨折の評価は救急外来の超高精細CTでない装置で検査されることが多い。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度に得られた成果につき、さらに論文化を進めていく。脳CT血管造影で脳動脈穿通枝の描出能を向上するための検査法の最適化のために、ファントム実験の準備を進めていく必要があるが、MRIにも対応可能なファントムを考慮しているので、MRI研究チームとのディスカッションも積極的に行う。こうして、ファントム実験に可及的早く移行できるように努める。 主に体幹部CTにおけるさらなる画質向上や被ばく低減の目的に人工知能による深層学習を応用した画像再構成法が新たに導入されたので、これも超高精細CTと併用し、その有用性を検討していく。本再構成法は逐次近似再構成と比較して計算時間が短いという特長もあり、両者を比較しつつ最適化を図っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度予定していたファントム作成が延期になったため、それにかかる費用を次年度に繰り越した。当該未使用額はファントム作成にかかる物品費、作成・実験協力の謝礼金に充てる。
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