前立腺癌小線源治療に関する臨床データ、dose-volumeデータ、生物学的データをニューラルネットワークの手法を用いて統合分析し、有害事象および生化学的(あるいは病理学的)再発を予測するモデルを構築することを目指し、研究を開始した。 令和元年度に引き続き、小線源治療後の晩期有害事象、特に直腸出血の予測モデルを構築した。当初の研究計画では、予測モデルとしてニューラルネットワークを用いたモデル構築を想定していたが、より精度の高い予測モデルを構築するため、ニューラルネットワークに限らず、他の機械学習手法(サポートベクターマシンやランダムフォレストなど)も同時に比較検討した。さらに、令和元年度はR言語を用いて予測モデルを構築していたが、令和2年度からはPythonも導入して予測モデルを構築した。その結果、機械学習を用いた直腸出血の予測モデルは、従来有用と考えられてきた直腸出血の予測因子よりも高い予測精度を示すことがわかった。また、機械学習手法間の予測精度の差異についても比較検討を行った。以上の成果について、米国放射線腫瘍学会の学術大会で発表を行った。 また、令和2年度の研究成果として、小線源治療後の再発を予測するモデルを構築した。生化学的再発の予測モデルについては、機械学習を用いることで、ROCカーブのAUCで0.9を超える高い予測精度を示した。生化学的再発と判定された症例について、局所再発・骨盤リンパ節再発・遠隔転移再発の予測モデルを構築したところ、いずれもROCカーブのAUCで0.7を超える予測精度を示した。特に、遠隔転移再発については0.9を超える高い予測精度が得られ、臨床的再発部位の予測に関しても機械学習が有用である可能性が示唆された。以上の成果について、日本放射線腫瘍学会の学術大会で発表を行った。
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