研究課題
前年度では凝集したGd-DTPA-NDに対して直径0.03 mmのジルコニア製ビーズを水中において超音波で撹拌することで分散できた.しかしながら,分散したGd-DTPA-ND懸濁液はMRI撮像下において十分な視認性を有していないことが判明した.その理由は,超音波攪拌中にGd-DTPA-NDがビーズと衝突したときの摩擦熱によって表面構造が破壊され,Gd-DTPAがND表面から消失したからではないかと思われる.そのため,超音波攪拌を用いずにGd-DTPA-NDを分散させる手法を検討した結果,ND表面に酸化処理を施すことで同じように分散性を向上できることがわかった.これは,NDの表面に多数の親水性官能基が修飾されることで,凝集を引き起こす大きな要因であった疎水性相互作用を抑制できたからだと思われる.また,この手法を用いることでNDの表面構造を維持したまま分散性を向上できるため,Gd-DTPAを保持して十分なMRI造影能を有することができると思われる.上記で述べた手法によって,高分散のGd-DTPA-ND粒子の作製に成功した.また,化学構造解析を実施したところ,表面構造の破壊や消失が起きていないが確認できた.また,水中にGd-DTPA-NDを分散させMRIで撮像したところ,Gd-DTPA-NDは既存の造影剤に比べて極めて低いGd濃度で同等のMRI造影能を有していることがわかった.Gdイオンは細胞毒性を有していることが知られており,その濃度を抑えることで造影剤の安全性を向上することができる.そのため,本研究において作製しているGd-DTPA-NDはリンパ系の選択的造影を実現するだけでなく,既存造影剤より身体への負担を抑えて造影できる可能性が示唆された.来年度は体液中や生体内においてGd-DTPA-NDの分散性およびMRI視認性を評価する予定である.
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、Gd-DTPA-Ndの分散性向上、Gd-DTPA-Nd 製剤を用いた3T-MRI in vitro 撮像実験が終了したため。
ウサギでのMRリンパ造影実験を行う予定である。
実験が予定通り進捗しているので、探索的な検討のための費用が削減された。翌年度は、動物実験費等の消耗品が多く必要になるため、次年度使用額は、そのために使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件)
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