研究課題/領域番号 |
18K07651
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
細野 眞 近畿大学, 医学部, 教授 (00281303)
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研究分担者 |
若林 源一郎 近畿大学, 原子力研究所, 教授 (90311852)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | RI内用療法 / 線量評価 / ベータ核種 / アルファ核種 / 個別化医療 |
研究実績の概要 |
本研究は、RI内用療法において患者の臓器や病巣に与える線量を評価して治療の最適化を試みることを目的とした。放射性医薬品を用いた標的治療であるRI内用療法(核医学治療)がわが国においても世界的にも目覚ましく発展している。従来はベータ核種が中心に用いられてきたが、アルファ核種である塩化ラジウム-223(Ra-223)が去勢抵抗性前立腺癌骨転移に適用されて有効性と安全性が示されており、他のアルファ核種の臨床応用への期待が高まっている。例を挙げると国内では数施設で加速器によって生成されるアルファ核種アスタチン-211(At-211)のRI内用療法への応用が検討されている。またベータ核種は、以前から用いられているヨウ素-131(I-131)、イットリウム-90(Y-90)のほか、新規のルテチウム-177(Lu-177)が神経内分泌腫瘍に対するソマトスタチン受容体標的治療において海外で利用され、Lu-177DOTATATEは欧米で承認された。本研究では、線量計算ソフトOLINDA/EXMを導入して、体内分布データに基づいてRI内用療法における患者の線量計算手法を確立した。これを通じてLu-177 ソマトスタチン受容体標的治療に関する適正使用指針策定の基礎データを蓄積した。並行してRI内用療法において臓器の吸収線量をbiologically effective dose (BED、生物学的実効線量、線量率やfractionationを考慮した線量)の指標で計算するための手法を検討した。またRa-223治療を実施した去勢抵抗性前立腺癌骨転移のデータを蓄積し、個別化治療の開発に繋がる因子を解析した。新規核種のRI内用療法においては体内分布データの取得手法を開発することと、それに基づいた線量評価を実施することが重要であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は概ね順調に推移しているが、体内分布データの取得と得られたデータを線量計算ソフトOLINDA/EXMに適用する手法のカスタマイズに時間がかかった。手法自体は組み立てることができたので、今後はより多くのデータを解析して線量評価と個別化の基礎データとする。
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今後の研究の推進方策 |
本研究を1年間延長することを承認いただいたので、RI内用療法の関する体内分布データの取得と得られたデータの線量計算ソフトOLINDA/EXMによる解析を継続して、データを蓄積する。得られた成果を学会発表・論文により公表していく。また、この研究期間中に標的アイソトープ治療線量評価研究会が立ち上がり、副会長を務めるに至った。2020年11月には第1回学術集会がWeb開催されて、国内外の研究者が多数参加した。この分野は極めて重要であり、線量評価のエキスパートとともに知見を共有し研究を進めていく。本研究の推進にとっても大きな追い風である。さらに新たに基盤研究(C) 「新規RI内用療法の導入に向けた線量評価に基づく標準的な実施指針の開発」を獲得することができたので、本研究で得られたデータと知見をさらに発展させる。本研究で得られた成果は、これを通じてアルファ核種・ベータ核種含めた新規核種・新規放射性医薬品の導入に際して、患者や第3者の線量評価データに基づいて、実施指針を容易に組み立てることができるテンプレートの策定に大いに活用する。
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