研究課題/領域番号 |
18K07653
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
長町 茂樹 福岡大学, 医学部, 教授 (40180517)
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研究分担者 |
白石 武史 福岡大学, 医学部, 准教授 (10216179)
野々熊 真也 福岡大学, 医学部, 助教 (20773229)
平塚 昌文 佐賀大学, 医学部, 講師 (90369017)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 肺移植 / 慢性呼吸不全 / 肺線維症 / 右心不全 / FDG-PET / MIBG |
研究実績の概要 |
肺移植予定患者の多くは難治性の慢性呼吸不全状態にあり、肺高血圧に基づく右心不全を来す場合がある。また肺移植後の患者における主な死亡原因は感染と慢性移植肺機能不全であることが知られている。移植術後に移植肺は脱交感神経状態に、心筋も一部交感神経機能低下状態になる期間があることから、移植術前後、遠隔期における右心代謝異常、心肺の脱交感神経状態を評価することは肺移植の適応決定、慢性移植肺機能不全に対し介入する支持療法の選択をする上で重要である。本研究は肺移植予定患者を対象に移植前後でFDG-PET/CT及び心筋MIBGシンチ検査を施行し、FDG-PET/CT検査から右室心筋代謝指標を、MIBGシンチ検査からは心筋と肺の交感神経指標を測定し、指標の変化と心肺の機能予後との関連を解析することで、肺移植の適応決定、遠隔期における管理、慢性移植肺機能不全予防治療導入、支持療法導入のための基準を確立することが目的で研究を開始した。 追加研究課題として既に肺移植が行われた症例の移植前の肺の病理組織を検討し、その線維症の程度をFDG集積、病理組織所見を用いて評価し右室心筋集積強度との相関を解析項目に追加した。なお肺移植前後で肺血流換気シンチが施行されている症例では、移植肺が呼吸機能に寄与していることが確認されており、肺移植後症例は極力、肺血流・換気シンチが施行された症例を対象とした。 肺移植前にFDG-PETを施行した10例の患者を解析すると2割で右室心筋の明瞭な描出、4割で淡い集積があり肺高血圧に基づく右心不全を示唆する所見であった。このうち4例に移植後の経過観察のFDG-PETを撮像、解析したが、明らかな集積の消失な無く、潜在的な右室不全の持続が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
移植肺患者のレトロスペクティヴな解析は可能であるが、プロスペクティブには移植時期が不定なため、検査の設定が難しい。また、レトロスペクティヴ解析についても、患者様の状態が必ずしも安定しておらず、予定設定が難しい場合がある。 倫理委員会に研究について審査を依頼し、許可を得るのに時間がかかったことも遅延原因である。 また現在撮像機器の更新、入れ替え中であり、シンチ画像が撮像出来ないのも遅延原因である。しかし、今後の研究にSPECT/CTは必須であり、機器更新により機能画像と解剖画像の融合画像の評価が可能になることで解析の精度が上がることが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
予定通り、プロスペクティブ、プロスペクティブな解析を心筋、肺において移植前後でFDG-PET検査、MIBG心筋シンチを用いて行う。また、移植肺前の患者様の肺病変、例えば、肺線維症等に対して新たに組織学的な検討も加えることにした。その病変の重症度と移植前における心筋糖代謝との関連、移植後の予後との関連についても検討を加える。 特にSPECT/CTによる解析を加えることで、血流シンチによる肺動脈循環評価、MIBGシンチによる血管内皮評価も期待できることから解析精度の向上が期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
移植肺患者のプロスペクティブ解析に関してはは移植時期が不定なため、検査の設定が難しかったことが原因である。特に倫理委員会から研究の許可を得た後は、移植症例が無かったことが大きな要因である。レトロスペクティヴ解析については、少数例ではあったが、解析を行った。しかし、患者の状態が必ずしも安定しておらず予定設定が難しい場合もあり、当初の予定と比べ症例数が少なく研究費用が残る結果となった。 また、当初の予定とは異なり、移植前肺の摘除後の病理組織標本を用いて画像解析(特にフラクタル解析)を行い、移植前のCT画像と比較することで、右室糖代謝との関連を新たに検討することとし、顕微鏡購入に一部予算を充当することとした。 今後は初年度に使用する予定であった予算を次年度の薬剤(FDGスキャン及びミオMIBG)購入に充当予定である。
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