研究課題
成人したヒト脳における神経新生が証明されて以来、多くの基礎研究や動物実験によって、神経新生が学習・記憶や精神神経疾患および神経変性疾患の治療において重要な役割を果たすことが明らかとなった。これらの研究結果は、動物モデルによる神経生物学的解析に大きく依存しており、ヒト脳においてこれらの仮説や臨床効果を検証するためには、客観的な評価システムの確立が必要であった。本研究では、ヒト脳における神経新生を非侵襲的にイメージングする技術の確立を目指した。そのため、現在唯一確立されているブロモデオキシウリジン(BrdU)による細胞標識法と同じ生化学的メカニズムに立脚したポジトロン断層撮像(PET)薬剤の開発を試みた。候補化合物として、生体内で非侵襲的にBrdUと同様にDNA合成を定量的に計測するためのPET薬剤として開発された4DSTを選択した。4DSTは、正常げっ歯類脳内で細胞増殖能の高い脳室下帯および海馬への集積性を示し、小動物PETにおいて、細胞増殖能の高い脳室下帯への放射能集積を認めた。小動物PETより分解能および感度に優れるオートラジオグラフィーでは、より明瞭に脳室下帯と海馬への放射能集積を認めた。脳室下帯と海馬への放射能集積は、細胞増殖を認めないと考えられる皮質に比べて有意に高く、半定量的に求めた脳室下帯/皮質および海馬/皮質は、それぞれおおよそ2倍程度であった。4DSTによる神経新生評価は侵襲的なオートラジオグラムにより解析可能であったが、小動物PET計測においては、C-11の半減期の短さと絶対集積量の少なさから定量計測は困難であり、薬剤負荷(プロベネシド)による脳内集積量の変化も認められなかった。最終年度は、4DSTの脳移行性を高める目的で2つの水酸基をアセチル基でエステル化したプロドラッグの合成を試みた。しかしながら、標識前駆体は分離精製時に単離することが出来なかった。
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