難治性がんの放射線治療成績向上を目的とする、体内の金属に対する放射線の影響に関する研究を行った。金粒子に関するナノテクノロジーで個々の細胞の遺伝子情報等の差異による放射線感受性の差を凌駕して、放射線治療の増感作用として活用する研究において、研究分担者である北海道大学工学研究院の柴山らと進める予定であった、細胞微細構造の電子顕微鏡による観察は、2018年9月の胆振東部地震の影響により、超高圧電子顕微鏡の除振台が損傷していたが、2019年度内に復旧済みである。またもう一名の研究分担者である北海道大学工学研究院の米澤らとは、体内投与可能な金ナノ粒子の化学的製造に関して、必要な物品の購入を行い、研究に着手済である。新型コロナウイルス感染の拡大を受け、全国もしくは一部地域に緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が断続的に発出され、照射実験実施の日程調整に難航した状況が継続していた。感染状況が改善しだいなるべく早期に実験を行うべく、研究実施期間について1年間の延長申請を行い承認されていたが、期間内には実験実施のめどが立たなかった。放射線関連の国内外の学会・研究会は新型コロナウイルス感染防止の観点から現地参加は困難であるが、オンラインで参加し、最新の金ナノ粒子の放射線増感効果に関する研究発表について引き続き情報収集を行った。また金ナノ粒子と放射線との相互作用に関連して、ペースメーカー等の植込み型医療機器に対する粒子線治療の影響評価において、陽子線と炭素線で比較検討した内容について論文化を行いJapanese Journal of Radiology誌に受理された。また将来的に金ナノ粒子の放射線増感効果の臨床応用の期待が大きい、小児がんの陽子線治療に関する発表を日本小児血液・がん学会学術集会等で行った。
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