研究課題/領域番号 |
18K07663
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田村 元 東北大学, 医学系研究科, 名誉教授 (20333817)
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研究分担者 |
神宮 啓一 東北大学, 医学系研究科, 教授 (00451592)
麦倉 俊司 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 教授 (20375017)
大田 英揮 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (40586905)
木下 俊文 秋田県立循環器・脳脊髄センター(研究所), 放射線医学研究部, 副病院長 (70314599)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 微小流体ファントム / 拡散係数 / 緩和時間 / 腎機能 / 血液酸素飽和度 |
研究実績の概要 |
令和2年度は、昨年度に引き続きIVIM-MRIの基礎的検討を行うとともに、臨床用MRI装置を用いたヒトデータの収集と解析を行った。 基礎的検討では、断面が0.2×0.4 mmのサイズで半径0.5 mm の半円が交互に連続して折り曲がる屈曲した1本の流路5層からなる微小流路ファントムを作成し、マイクロCTを用いてその精度を確認した。流路に水を様々な速さで注入し、流水の速さに応じたMRI拡散強調信号強度の変化を調べた。一方、コンピュータシミュレーションを行い、そのファントムを用いて流水の速さを変えた際のMR信号の変化を求める理論的予測 (シミュレーション) と測定値とを比較検討した。その結果、測定した撮像パラメータで観測された信号強度と理論的予測は良く一致した。さらに撮像パラメータを様々に変化させて測定を繰り返すことにより、IVIM-MRIにより得られる信号の性質について、特に酸素飽和度に関連する流体の緩和時間測定の可能性についての新たな知見や、撮像に用いたMR装置の性能評価に役立つような知見が得られることが期待される。この結果は国際磁気共鳴医学会2021年次総会で発表する予定である。 臨床MRIデータに関して、腎臓、食道、脳を対象に収集した。特に腎について、臨床データと比較した。昨年度同様、血管外実質組織成分、血流 (腎臓内を循環している血液) 成分、および尿細管内の水成分からなる3コンパートメントモデルを用いた解析を行った。これにより、腎実質組織に含まれる水の拡散係数と緩和時間、腎の血流成分の体積比とその横緩和時間、尿細管内水成分の割合を推定した。腎シンチグラフィと比較し、分腎機能 (GFR) と、腎実質組織の緩和時間が良く相関することが確認された。血液の酸素飽和度に対応する指標には分腎機能との逆相関が見られた。この結果は、国際磁気共鳴医学会2020年次総会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1. 微小流体ファントムの評価と改良・制作を繰り返し行う必要が生じ、それを用いた実験が、まだ完了していない。 2. 健常ボランティアの撮像が、まだ完了していない。また、データ解析法の改良をして再度解析したため、データ解析に時間がかかっている。 3.秋田県立循環器・脳脊髄センターにおける症例がまだ小数である。
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今後の研究の推進方策 |
1. 流体ファントムを用いた基礎研究を完成させる。特に、ファントム全体を薄くして液体中に置き、ファントム周囲の液体を含めた信号を採取し、両者の混在した信号強度の解析から、ファントム内を流れる水信号を抽出できることを確認する。 2. ヒトデータの取得と解析。 腎臓に関しては、健常ボランティアをさらに5例追加して解析を行う。臨床例では、東北大学病院における腎動脈狭窄症例、食道癌症例とも数例追加する。いずれも臨床データとの比較を行い、IVIM画像の妥当性・有用性を検討する。一側頚部動脈脈狭窄症については、秋田県立循環器・脳脊髄センターにおいて収集されるMRIデータとPETデータの比較を行うことにより、直接的に血液酸素飽和度の信頼性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末近くに注文した画像解析ソフトの値段が予算をオーバーしたため、次年度に回し執行予定である。
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