研究課題
食道癌のIVIM-MRI撮影プロトコールは昨年度作成しており、昨年に引き続き今年度も実際の画像の撮影とIVIM解析のためのソフトウェアにより実際の解析を行い症例数を蓄積してきている。食道癌のIVIM解析に関して、徐々に症例が増えてきたため、その結果を学内外で発表し、本手法が食道癌の予後や化学放射線療法の治療効果と相関する可能性を示すことが出来た。一部の結果については十分な症例数があるため、論文化を開始している。また食道癌のMRI画像(ADC map)を用いたtexture解析についてはレトロスペクティブな解析が可能であり約100例以上の結果がまとまったため、学会発表、及び論文化(英語論文2本)することが出来た。この結果により食道癌の最適な術前療法を選択できる可能性が見えてきたが、腫瘍のROIの設定など普遍的なバイオマーカーとするにはまだ課題が残っている。これはIVIMの研究でも改善すべき課題であり、今後解析ソフトを改良し新たな手法を開発中である。補助金は主に画像解析用のソフトウェアのアップデート、解析用の物品の購入、学会発表の旅費などに当てられた。
2: おおむね順調に進展している
IVIM専用のソフトウェアを導入し、これまで総数で約80例の食道癌のMRI撮影とIVIM解析を行っている。この全症例に置いてIVIMのパラメーターと予後の相関を調べたところ、有意な相関が認められており、腫瘍内のperfusionが不良な症例の予後が不良であることがわかっている。また化学放射線療法の効果予測では42例の検討からperfusionの低い症例で、化学放射線療法による効果が低下する傾向が認められている。これらは私たちの過去のCT perfusionでの検討と同様の傾向であり、恐らくは血流不良による低酸素状態や、drug deliveryの低下に基づくものと推測している。一方、食道癌の腫瘍内ADC値のtexture解析も100例以上で行ってきたが、この解析では食道癌の術前に化学放射線療法を受けた症例の中で病理学的に完全奏功となる症例を治療前に予測できる可能性が見出され、本年度に論文にて発表することが出来た。化学放射線療法以外の手術症例や術前化学療法後手術症例での予後マーカーとしての可能性についても論文発表を行うことが出来た。これらの研究からMRIは今後食道癌の術前療法を選択する上での重要なツールとなりうると考えている。
基本的に研究計画の変更はない。今後も症例を増やし多くの解析を行い、IVIMが治療効果予測や予後予測に役立つツールとなりうるか検証していく。一方、ADC mapのテクスチャー解析は食道癌の予後についてのバイオマーカーとして有用なツールとなる可能性を論文にて発表することが出来たが、こちらについてもより普遍性の高いバイオマーカーとして確立出来るよう計測の自動化などの可能性を研究していく。画像の計測値と血管新生に関する因子などとの比較についても継続的に行なっていく。Massachusetts General Hospitalとの共同研究に関しては留学生が派遣されていたが、2020年3月に帰国となっている。新型肺炎の影響もあるが、状況を見つつ今後の共同研究の可能性を模索していく。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件)
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