研究課題/領域番号 |
18K07672
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
古川 高子 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 教授 (00221557)
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研究分担者 |
清野 泰 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 教授 (50305603)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 低酸素腫瘍 / がん幹細胞性 / エピジェネティック / CtBP / CuATSM |
研究実績の概要 |
本研究課題では、低酸素腫瘍の診断・治療に用いられる放射性銅標識Cu-ATSMの集積とがんの難治性を結ぶメカニズムに、NADH/NAD+比を介するエピジェネティックな変化が関わっているかを明らかにしようとしている。 2018年度は、これまでに培地のグルコース含有量により、NADH/NAD+比を介するC-terminal binding protein (CtBP、がん幹細胞性にかかわる遺伝子を含め、癌の悪性度に関係するとされる各種遺伝子の発現をエピジェネティックに変化させるとされる)の発現変化が報告されているMCF-7(ヒト乳がん細胞)、に加えて、U87MG(ヒトグリオーマ細胞)を高濃度(4.5g/L)あるいは低濃度(1g/L)のグルコースを含む培地条件、と、常酸素(20% O2)あるいはマイルドな低酸素(5% O2)条件の組み合わせの下、3ヶ月以上長期に培養し、CtBP2およびがん幹細胞マーカー(CD133)の発現変化が見られるかをwestern blottingを用いて観察した。また、これらの細胞の64Cu-ATSMの低酸素下での細胞取り込みに差異が生じたかを比較検討した。 今回の検討では、培養時のグルコース濃度による遺伝子発現、64Cu-ATSMの取り込みにはMCF-7、U87MGでともに有意な変化は認められなかったが、酸素濃度5% のマイルドな低酸素条件下での長期培養は、MCF-7のCtBP2やCD133の発現を上昇させ、同時に64Cu-ATSMの細胞取り込みの増加をもたらした。この結果は少なくとも一部のがん細胞においては、NADH/NAD+比を介するCtBPの発現変化が、癌幹細胞性の獲得とともに、64Cu-ATSMの取り込みにも影響している可能性を示すものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初種々の低酸素条件での培養によるがん細胞の馴化を予定していたが、厳しい低酸素条件では細胞の維持が困難で、実験に十分な細胞数の確保ができず、実験条件の選択・設定に時間を要した。また、福井大学で実施しているCu-64を用いる実験では、供給スケジュールと、実験実施者の授業その他のスケジュールのすり合わせが難しく、希望するだけの頻度で実験を行えない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
前述のように、研究進捗にやや遅れが生じているが、これを回復するため、細胞の維持が難しかった厳しい低酸素条件にこだわらず、がん幹細胞性の獲得が見込める培養条件を検索し、より範囲を広げて、NADH/NAD+比、CtBP、がん幹細胞性の獲得の関係についての検証を進めていく予定である。また、夏季など、時間に自由が利く期間に集中的に実験が行えるよう計画的に準備を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度は研究進捗にやや遅れが生じ、このため、研究費にも次年度使用額が生じている。2019年度には、2018年からの持越し分を合わせた研究費を用い、名古屋大学における細胞実験、福井大学での細胞及び動物を用いるRI実験を積極的に進めていきたい。また、学会での成果発表も予定している。
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