研究課題
Programmed cell death-1(PD-1)およびprogrammed cell death- ligand-1(PD-L1)シグナリングパスウェイは、がん細胞が宿主の自己免疫による腫瘍制御を回避するために利用する強力なT細胞阻害経路である1)。抗体を用いてこの経路を遮断する免疫チェックポイント阻害薬は一部のがんにおいて強力な抗腫瘍効果がもたらすことが分かっている2,3)。我が国においてはニボルマブ(オプジーボ)が根治切除不能悪性黒色腫に対して承認されたのち、腎細胞がん、再発非小細胞がん、ホジキンリンパ腫、胃がんに対して順次適応が拡大され、今後他のがん種に対しても急速に適応が拡大される可能性が高い。 しかしながら本薬剤は薬価が極めて高価であるだけでなく、一定の頻度で治療効果が不良な例があること、また重篤な副作用が発生することが知られており、治 療効果が期待される。症例の適切な選別法の確立が必要不可欠である。 腫瘍におけるPD-L1発現は、抗PD-1 /抗PD-L1療法に対する反応を予測するバイオマーカーであるため、腫瘍におけるPD-L1の発現レベルの正確な評価法の確立が 重要である。PD-L1の発現を評価する方法は従来直接biopsyによる免疫染色法しかなかったが、全病変に対し生検を行う事は特に多発転移を伴う患者の場合現実 的ではない。さらにPD-L1の発現は一個人内の複数の病変で不均一である可能性、また治療に伴い動的に変化する可能性が指摘されており、非侵襲的な評価法 の確立が望まれる。近年ポジトロントレーサーを用いてPDL1の発現を画像化する方法が報告されつつある。本研究ではPD-L1を18Fで標識した18F-PD-L1を作成 し、動物実験を経て臨床応用を行うまでを目的とする。新しいトレーサーであるため、臨床研究の報告は少なく、臨床有用性はまだ確認されておらす、早期の臨 床研究の成果が待たれる状況である。 本年度は抗体標識に適した放射性核種合成のための設備体制の構築と合成を行った。