研究課題
【背景】HPV陽性中咽頭癌は、放射線治療に対する反応が良好である。これには、腫瘍免疫の関与の可能性がある。照射前の生検標本を用い、p16蛋白や腫瘍免疫関連蛋白の免疫染色を行い、予後との関連を解析した。【方法】2005年から2014年に放射線治療を行った中咽頭扁平上皮癌92例を対象とした。p16陽性は45例、p16陰性は47例であった。放射線治療前の生検標本を用い、PD-L1(Programmed cell Death 1- Ligand 1)抗体、細胞障害性T細胞のマーカーであるCD8抗体を使用して免疫染色を行った。PD-L1の発現は、腫瘍細胞の発現(PD-L1 TC)と腫瘍周囲のマクロファージや樹状細胞などの免疫細胞(immune cells)の発現(PD-L1 IC)に分けて評価した。CD8は腫瘍浸潤リンパ球をカウントし、CD8陽性リンパ球の割合とした。【結果】p16陽性群は、p16陰性群と比較して全生存率、無再発生存率、いずれも有意に良好であった。また、p16陽性群はp16陰性群と比較して、PD-L1 TCの発現及びCD8リンパ球数が有意に高く、PD-L1 ICも発現が高い傾向であった。PD-L1 TC、PD-L1 IC、CD8いずれにおいても高発現群が低発現群より、全生存率が有意に予後良好であった。p16陽性でPD-L1 IC高発現群の5年全生存率は95.5%、p16陰性でPD-L1 IC低発現群は50%未満であった。一方、p16陰性でPD-L1 IC高発現群の全生存率(65.9%)は、p16陽性でPD-L1 IC低発現群と同等であった。多変量解析では、PD-L1 ICが、Charlson’s index、併用療法の有無とともに予後因子であった。【考察、結論】細胞傷害性T細胞はインターフェロンγを分泌し、腫瘍細胞を攻撃するが、腫瘍細胞や腫瘍浸潤免疫細胞はインターフェロンγによりPD-L1の発現が誘導される。よって、PD-L1 TCやPD-L1 ICの高発現は、抗腫瘍免疫応答の活性化の指標と考えられる。中咽頭癌の放射線治療において、免疫細胞による抗腫瘍効果は、中咽頭癌の放射線治療成績に、有意に影響すると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
研究目的に、生検標本を使用した免疫組織化学染色により、放射線治療成績の予測があるが、これに関して、有望な結果が得られたため。
中咽頭癌以外の癌でも、同様の研究を行う。特に、DNA2重差切断の修復能や腫瘍免疫能と放射線治療成績の解析を進める。
【理由】すでに研究室にあった消耗品を使用して研究を行ったため、残額が生じた。【使用計画】30年度の残額と次年度の直接経費を使用して免疫組織染色、DNA-PK活性測定、in vitroの研究を行う。これらの研究における消耗品購入、成果発表のための学会参加の費用などに使用する予定である。
すべて 2018
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Radiother Oncol.
巻: 129 ページ: 409-414
10.1016/j