研究課題/領域番号 |
18K07684
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
坂田 耕一 札幌医科大学, 医学部, 教授 (10235153)
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研究分担者 |
北川 未央 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (30608922)
福島 悠希 札幌医科大学, 医学部, 助教 (60749787)
長谷川 智一 札幌医科大学, 医学部, 助教 (80631168)
土屋 高旭 札幌医科大学, 医学部, 助教 (90631169)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 放射線治療 / 子宮頸癌 / 腫瘍免疫 |
研究実績の概要 |
【目的】放射線治療が免疫微小環境に及ぼす影響、腫瘍関連蛋白の発現と放射線治療成績の関連について検討した。CD 8陽性細胞傷害性T細胞(CDL)のマーカーであるCD8、CTLが認識する癌細胞のHLAクラス1、CDL抑制分子であるPD-L1とそのレセプターであるPD1、制御性T細胞マーカーであるFoxP3の発現を子宮頸癌組織の放射線治療前後の検体で比較検討し、照射によるがん組織の免疫状態の変化と子宮頸がんの予後について検討した。 【方法】当院で2000年から2011年に行われた子宮頸がんに対する術前放射線療法108例の治療前生検検体及び手術検体に対してPD-L1、HLAクラス1、CD 8、FoxP3、PD-1抗体を用いて免疫組織染色を行い、放射線治療前後の各抗原の発現の変化と予後との関連を検討した。術前照射線量は、40Gyの全骨盤照射を基準とした。 【結果】腫瘍細胞に発現するPD-L1は放射線治療後に有意に増加した(p=0.010)。5年疾患特異的生存率(DSS)は治療前の生検標本において、HLAクラス1陽性例(85.7% vs 65.4% p=0.012)やCD 8陽性細胞高浸潤例(87.0% vs 71.0% p=0.019)で有意に良好であった。一方で、治療後の手術検体では腫瘍に発現するPD-L1陽性例でDSSが有意に良好であった(p<0.001)。また治療後の腫瘍細胞に発現するPD-L1陽性の症例では陰性例に対して照射外再発が有意に少なかった(79.1% vs 34.3% p=0.001)。 【考察】放射線治療は癌の腫瘍免疫を賦活し、その賦活の程度が治療成績に影響することが示唆される。放射線治療後の腫瘍細胞のPD-L1陽性の症例では照射外再発が有意に少なかったことは、放射線治療によるアブスコパル効果が関与している可能性も考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的の一つである、生検標本を使用した免疫組織染色による放射線治療成績の予測があるが、前年度の中咽頭癌に加えて、今年度では、子宮頸癌においても、放射線治療が腫瘍免疫の微小環境を変化させ、治療成績に影響している結果が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
中咽頭癌、子宮頸癌以外の癌でも、同様の研究を行い、腫瘍免疫が、放射線治療成績にどのように影響しているかの解析を行い、放射線治療と免疫チェックポイント阻害薬との効果的な併用方法の確立に資する結果を得るようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
【理由】すでに研究室にあった消耗品を使用して研究を行ったため 【使用計画】令和元年度の残額と次年度の直接経費を使用して、免疫組織染色・DNA-PK活性・in vitroの実験を行う。これらの研究における消耗品購入、成果発表のための学会参加の費用等に使用する予定である。
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