研究課題/領域番号 |
18K07693
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研究機関 | 聖路加国際大学 |
研究代表者 |
松迫 正樹 聖路加国際大学, 聖路加国際病院, 医長 (90209528)
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研究分担者 |
原 武史 岐阜大学, 工学部, 准教授 (10283285)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 結節状陰影 / 定量解析 / 体積倍加時間 |
研究実績の概要 |
本年度は,用いるデータベースの特徴の確認と,計算環境の構築を主に実施した.まず,データベースの特徴の確認のため,手動で抽出した肺結節の輪郭から,体積倍加時間(Volume Doubling Time: VDT)の計測を実行した.ここで,VDTが10年以上となる超長期のVDTは,統計から除外した. 良性群においては,36組の結節の成長においてVDTの計測が可能であった.その平均/中央値/最大/最小は,それぞれ,1702日/1776日/3512日/428日であった.悪性群においては,106組の計測が可能であった.その平均/中央値/最大/最小は,それぞれ,686日/401日/3463日/45日であった.両者のVDTの間には,統計的有意差が確認された(p<0.001). 体積が3回以上計測できた結節について,初回の組みから計測したVDTと最後の組みから計測したVDTの比較を,良性群と悪性群について,それぞれ行った.悪性群では,初回/最終回それぞれで平均811日/322日であった.両者には有意差が認められた(p=0.005 ).良性群では,初回/最終回それぞれで平均1121日/1978日であった.両者には有意差は認められなかった.さらに,初回のVDTに関して,良性群と悪性群の有意差検定をおこなった結果,両者には有意差は認められなかった(p=0.053). 以上のことから,VDTは悪性は短く良性は長いという臨床的な経験が定量的に観察され,さらに,VDTの変化の程度は,良性と悪性によって異なる事実が明らかになった. 計算環境の構築については,研究分担者が中心に行い,データベースの共有および具体的な計算の実行を確認した.また,画像定量化および特徴抽出に関してのアルゴリズム開発を行い,SPECT/PET/CT画像データベースを用いて別モダリティの画像を利用した実験を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データベースの特徴把握について,研究代表者と分担者とそれぞれで独立して実行できた.画像データの確認は,研究実施の基本的な作業であり,その検証が丁寧に実行できた.また,計算環境の構築もでき,深層学習に関する実験および初期の結果については実験結果が得られた.また,結節状陰影の自動抽出についてもGPUを利用した環境が構築できた.
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今後の研究の推進方策 |
輪郭データの確認作業および自動抽出方法について,手動抽出の結果と自動抽出の結果の比較を行う.そこで得られた領域について,VDTによるクラスタリングを行う.また,1つの結節状陰影からVDTを推定する畳み込みニューラルネットワーク型回帰分析を実現し,1回の検査で,VDTの最大と最小を推定する手法について,実験を開始する.
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次年度使用額が生じた理由 |
謝金の支払いについて,差異が発生した.また,購入物品の価格が変動した影響がある.
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