AutoEncoder(AE)を用いた特徴量の抽出は,経験に大きく依存しない解析法としてよく知られている.最終年度は,体積倍加時間(Volume doubling time: VDT)および腫瘍の良悪性に関して特徴量の抽出とその可視化,そして1回の撮影から得られる良悪性の精度を総合的に明らかにし,論文投稿を完了した. 本研究では胸部CT検査を3~8回受診した診断が確定している患者から得られた画像を対象に実験を行った.良性結節20症例と悪性結節28症例の合計48症例であり,結節状陰影が存在するスライスのうち良性330枚,悪性950枚を用いた. CT画像から結節領域を切り出し128×128画素に変更し,その画像に対してAEを用いて32×32×4次元の特徴抽出を行った.ここでAEは,画像特徴から元の画像への再構成誤差を最小化するように学習を行った.得られた特徴量を部分空間法,SVM,ランダムフォレストの3つの手法で良悪性の分類を行った.AEの学習は10-fold cross validationで行なった.精度の評価は,ROC曲線下面積(AUC),精度(Accuracy),感度(Sensitivity)で行なった.部分空間法,SVM,ランダムフォレストで得られたAUC/Accuracy/Sensitivityは,それぞれ0.94/0.84/0.92,0.95/0.84/0.92,0.92/0.84/0.92であった. 以上のことから,AEによる画像特徴量の抽出は良悪性鑑別に有益であることが示唆された.また,VDTの値によって特徴量空間における結節状陰影の分布が異なる傾向が確認された.この分布の違いからVDTを特定する方法を見出すことができなかったが,さらなるデータ収集によってVDTの違いによる画像特徴の変化が可視化できる可能性が示された.
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