研究課題/領域番号 |
18K07699
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
坂田 宗之 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (00403329)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | PET / FDG / 認知症 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
本研究では、FDG-PETを中心としたPETデータとMRIを用いた認知症自動鑑別診断支援の実現を目的とし、被験者の画像を入力として機械学習等を用いて正常または認知症の原因疾患(アルツハイマー病、前頭側頭葉変性症、びまん性Lewy小体病)の鑑別を行い、画像から得られる客観的指標として疾患特異度と進行度の出力で認知症の鑑別診断支援が可能となる仕組みの実現を目指している。 令和2年度は、主にPETデータの機種間差の補正についての研究を行った。PETのデータは機種間差があることが知られており、縦断研究等では可能な限り撮像機器の変更は行うべきではないが、多施設共同研究での利用などを考えると、複数のPETスキャナで計測されたPETデータを用いて鑑別診断が行えるようにすることには大きな意義がある。我々が過去に用いたPET専用機の旧機種と現行のPET/CTの新機種では、分解能の差だけでなく各種補正法の差や視野外放射能の影響などにより得られる脳内分布に機種間差が存在し、この補正を脳FDG画像の統計比較を題材に検討した。今回は、単回のFDG投与後に旧機種と新機種で連続して計測した健常高齢者および認知症例の脳PET画像を用いた。健常高齢者群の平滑化後の平均画像により新旧機種の比較を行い、この比を補正フィルタとして用いて旧機種画像から模擬新機種画像を作成し、健常高齢群との統計比較での代謝低下検知領域の変化を調べた結果、旧機種画像の平滑化は半値幅を変更することで分解能差の影響が低減された。旧機種は新機種に比べて頭頂部で高く、前頭部で低い傾向があった。補正により検知領域が新機種画像の結果に近付いた例と効果が無い例が存在し、さらなる検討が必要である。 本研究成果の一部は令和3年度に国内学会での発表を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
機械学習を行う為には一般的に学習及びテストに使用する臨床データが多数例必要であり、本研究でも症例の追加が必要であるが、新型コロナウイルスの感染拡大による非常事態宣言の発令やまん延防止等重点措置によって、本研究のデータ収集に当たるPET計測や研究打合せを含む研究業務に影響が有り、当初の計画に比べてやや研究が遅延している。 令和2年度は研究機関の最終年度であったため、補助事業期間の延長を申請してそれが承認されており、研究内容は概ね変更無く令和3年度に持ち越して実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究として実施してきた画像再構成法についての検討、特徴量抽出法や、機種間差補正法の検討などについて結果を整理し、これまで使用してきたデータセットの画像群の更新を予定している。具体的には、これまでは自施設での計測例を単一のPET専用機でのデータだけを用いていたが、新規導入されたPET/CTで計測されたデータを追加し、今後得られるPET/CTのデータを対象とした仕組みとして再構築を行う。並行して、本研究の主題である非典型例や亜種に着目したアルゴリズムの改良やさらなる計測によるデータの追加についても引き続き検討を進め、(研究期間延長後の)最終年度として研究をまとめる計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大による非常事態宣言の発令やまん延防止等重点措置によって、本研究のデータ収集に当たるPET計測や研究打合せを含む研究業務に影響が有り、当初の計画通りに研究が進捗しなかった。令和2年度は研究機関の最終年度であったため、補助事業期間の延長を申請してそれが承認されており、研究計画は令和3年度に持ち越して実施する予定である。 また、世界的な半導体の不足により導入を予定していた製品の調達が遅延および価格が高騰しており、令和3年度に改めて調達を行う計画となっている。
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