本研究では、FDG-PETを中心としたPETデータとMRIを用いた認知症自動鑑別診断支援の実現を目的とし、被験者の画像を入力として機械学習等を用いて正常または認知症の原因疾患(アルツハイマー病、前頭側頭葉変性症、びまん性Lewy小体病)の鑑別を行い、画像から得られる客観的指標として疾患特異度と進行度の出力で認知症の鑑別診断支援が可能となる仕組みの実現を目指している。 令和3年度は、前年度に引き続き、主にPETデータの機種間差の補正についての研究を行った。我々が過去に用いたPET専用機の旧機種と現行のPET/CTの新機種では、分解能だけでなく脳内分布に機種間差が存在し、この補正を脳FDG画像の統計比較を題材に検討した。 今回は、前年までの試行を元に深層学習(Deep Learning)を用いた手法を検討した。検討には単回のFDG投与後に旧機種と新機種で連続して計測した健常高齢者および認知症例の脳FDG-PET画像およびT1強調MR画像を用いた。深層学習としては画像生成器にU-netを採用した。U-netは主に2次元画像に用いられているが、本研究ではこのネットワークを3次元に拡張し、新旧機種のPET画像の対を入力することで旧機種から新機種への画像変換するモデルの学習を行った。また、使用可能なデータ数が限られているため、DARTEL法を用いたT1強調MR画像の解剖学的標準化パラメータを用いてあらかじめFDG-PET画像を解剖学的に標準化する前処理を行うことで数十例程度の学習データでも学習は収束した。学習された画像変換モデルを用いることで、前年度の結果を上回る機種間差補正の効果は得られたものの、効果が高い例と補正により結果が悪化する例が存在し、さらなる検討が必要である。 本研究成果の一部は令和4年度以降に学会などでの発表を予定している。
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