研究課題/領域番号 |
18K07701
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山本 徹 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (80261361)
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研究分担者 |
黄田 育宏 国立研究開発法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳機能解析研究室, 主任研究員 (60374716)
唐 明輝 北海道大学, 保健科学研究院, 助教 (80794156)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | MRI / oxygen / paramagnetism / relaxation |
研究実績の概要 |
昨年度実施した細胞内高粘を模擬したグリセロール水溶液(91% (w/w))MRI信号の酸素濃度依存性実験結果に、グリセロールの水酸基と水分子の水素原子の化学交換状態の影響が判明したため、本年度はその化学交換状態の指標となる水酸基のケミカルシフトの値をもとに化学交換の影響を取り除く高精度な実験および解析を実施した。その結果、酸素分子によるMRI信号の横緩和時間短縮効果がグリセロール水溶液(粘度:75 cP)では、生理食塩水(1 cP)の230±50倍に増強されることが定量化された。また、本年度は当初予定していた「MRI信号に現れる細胞内酸素濃度変化の検証」に取り組み、3T MRI装置にて健常人頭部を対象に、高粘性状態の細胞内からのMRI信号を強調する拡散強調撮像法を用いて時系列連続撮像を行い、頭部MRI信号の安静時揺らぎを調べた。得られた結果は、酸素分子による縦緩和時間短縮に伴う信号増強効果と、横緩和時間短縮効果に伴う信号減弱効果が拮抗し酸素濃度変動によるMRI信号揺らぎが発生しない特異的なエコー時間の存在を示した。また、その特異的エコー時間には、時系列連続撮像繰り返し時間の増加とともに低下するという理論的特性があることも定量的に確認した。これらの結果より拡散強調撮像による頭部MRI信号には高粘性状態の細胞内の安静時酸素濃度揺らぎが反映されることが示唆された。また、画像雑音の影響も定量的に調べ、得られた結果が人頭部細胞内からのMRI信号由来の結果であるとの自信を深めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度の高粘性グリセロール水溶液を対象とした研究で判明した課題に対処したため、3T MRI装置での人を対象とする研究が遅れ、予定していた7T MRI装置での健常人頭部を対象とする実験に至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
7T MRI装置での健常人頭部を対象とする実験に速やかの着手し、今年度の当初の研究計画である「神経細胞からの信号を直接捉えるfMRI法の開発」を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の研究で判明した課題に対処したため、本年度予定していた人を対象とする多数回のMRI実験の実施が大幅に遅れた。そのため、計上していたその実験にかかわるMR使用料や実験被験者謝金等を次年度に繰り越した。次年度はこれらの実施できなかった実験を速やかに開始できる予定であり、繰り越した助成金と合わせて使用する計画である。なお、コロナウイルス蔓延により2020年3月に予定していた研究打ち合わせを中止したが、この費用も次年度に繰り越し適宜研究打ち合わせを実施する予定である。
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