研究課題
2021年稼働開始予定の山形大学の重粒子線治療施設は、附属病院と直結されており、病院の手術室から直接患者をストレッチャーで照射室に搬送可能な設計となっている。加えて、スキャンニングビームを用いるためボーラスやコリメータの作成が不要であること、回転ガントリーを備えており手術体位を維持したまま術野・標的に自由な角度で照射が可能であることなどから、理論的には世界ではじめて術中重粒子線療法を実施可能な施設であり、かつ電子線術中照射と異なり正確な治療計画の元に照射を行うこともできる。本研究では、搬送経路、実施に要する時間など、実際に実施が可能かどうか検証を行った。開創状態でCTを撮影し、治療計画を実施後、ただちに重粒子線の照射を行う時間についても検証を行った。頭部、頸部、胸部、腹部、骨盤部に分けて検討を行ったが、最も時間を要した頸部でも撮影から画像転送まで24分、治療計画実施時間も最も時間を要した頸部で18分とであった。この間、実際の治療の際には外科、麻酔科、ME、看護師などは重粒子線照射室外で待機しているわけであるが、長くかかっても概ね1時間以内に、CT撮影、治療計画、患者をCT室から重粒子線照射室へ搬送、照射セットアップ、術中重粒子線治療を終了できることが示された。また、術中重粒子線療法を実施する際に必須となる、世界最小の回転ガントリーが完成性、アクセプタンス試験を終了、角度毎のビーム品質のチェックを実施した。令和3年度末時点、0度、270度の水平方向に加え、上部5角度の品質チェックが完了し、術中重粒子線療法に使用するビームの検証を完了することができた。
3: やや遅れている
送れていた回転ガントリーが完成し、令和3年12月に正式に山形大学に引き渡された。ただちに、角度毎のQAを開始し、令和3年度末時点で、0度、270度の水平方向に加え、上部5角度の品質チェックが完了し、術中重粒子線療法に使用するビームの検証を完了することができた。
手術室への立ち入りが制限が解除された段階で、開創状態で手術室から重粒子線治療センターへストレッチャー搬送する時間を測定する。同時に、各種麻酔機器、モニター類、点滴とラインの確保などにも問題が生じないか、確認を行う。研究の最終年度に当たっており、術中重粒子線療法が可能であることが示された後は、プロジェクトチームを結成し、プロトコール作成、倫理委員会受審を経て、臨床試験としての実際の治療準備に取りかかる。
コロナウイルスパンデミックのため研究推進に向けた多職種の協力体制が構築出来なかった。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
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10.1111/cas.15019.
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