研究課題/領域番号 |
18K07709
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
藤井 啓輔 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 講師 (40469937)
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研究分担者 |
野村 恵一 国立研究開発法人国立がん研究センター, 東病院, 放射線技師 (50767738)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 医療被ばく / 放射線防護 / 低コントラスト |
研究実績の概要 |
本研究では、画質および線量評価に基づいて、被検者体型に適したCT撮影条件を検討することを目的としている。今年度は、CT画質および線量評価について、主に以下の結果を公表した。 画質評価について、従来法に基づいて評価したコントラストは、信号径の違いを反映しておらず、視覚的印象に合わない場合がある。また、CT 画像上のノイズは、CT 値の標準偏差(Noise SD)を用いて評価される場合が多いが、画像再構成関数や画像処理方法が互いに異なる画像を比較した場合、Noise SD は、視覚による主観的評価と一致しない場合がある。そこで、本研究では、移動平均フィルタを用いた画質評価方法を考案した。また、低コントラスト評価ファントムのCT画像に、この評価法を適用したところ、視覚による主観的印象とよく合っていた。これらの評価結果をまとめ、国内の関連学会で発表を行った。 線量評価については、被写体サイズの異なる2種類のファントム(小児5歳および10歳児体型を模擬した人体ファントム)内の各組織・臓器位置に蛍光ガラス線量計を設置して、これを代表的なCT撮影条件で撮影することで、各組織・臓器の吸収線量を測定、評価した。また、小児5歳および10歳児体型を模擬した人体ファントムのCT画像からファントムのモデル(ボクセルファントム)を作成し、CT装置のジオメトリや撮影条件に関する各種パラメータを設定し、モンテカルロシミュレーションを行うことで、各人体ファントムの線量分布を求め、各組織・臓器の吸収線量を評価した。さらに、シミュレーション計算に基づいて評価した線量値と実測に基づいて評価した線量値を比較・評価し、シミュレーションにより評価した線量値の推定精度を評価した。これらの線量評価結果をまとめ、海外の学術雑誌に論文を投稿し、掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CT検査を受診する被検者体型に即した撮影条件を検討するには、様々な被写体サイズを模擬した画質評価ファントムが必要であるが、そのようなファントムは市販されていない。そこで、本研究では、サイズの異なる2種類の低コントラスト評価用ファントムを作成している。このファントムを作成するため、診療目的で過去にCT検査を受診した小児および成人被検者のCT画像データを収集し、小児および成人体型の縦横径、周囲径、CT値などを解析し、ファントムのサイズ、ファントムのベース部(生体軟組織等価材質)のCT値を決定した。次に、ファントムのベース部やファントム内に設置する模擬腫瘤の材質を選定するため、素材の配合を変えたサンプル樹脂を複数作成した。また、ファントムサイズによって、同じ材質でも、線質硬化の影響により、CT値が異なると考えられるため、作成予定のファントムと等価直径を有する、2種類のサイズの水ファントムを作成し、この水ファントム内に、サンプル樹脂を設置した。これをCT装置で撮影し、CT画像を取得して、各サンプル樹脂のCT値を測定し、ファントムのベース濃度よりもCT値が10-20 HU 程度高い樹脂素材を選定した。また、樹脂のサイズは直径3-10mm程度とし、この模擬腫瘤をファントム内に同一面内に等間隔に配置する。従って、平成30年度においてサイズの異なる2種類の低コントラスト評価用ファントムの設計および使用素材の選定は完了しており、当初の研究計画通り、本研究は、おおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方針として、ファントムサイズの異なる2種類の低コントラスト評価用ファントムを完成させる予定である。また、作成した低コントラスト評価用ファントムを用いて、画像解析および線量評価を行う。画質評価については、臨床現場で使用されているCT装置を用い、撮影条件(管電圧、管電流、ピッチファクタ、ビーム幅等)や画像再構成条件を変えてファントムを撮影し、取得したCT画像を解析する。また、近年、開発された逐次近似応用再構成法に基づいた画像再構成により取得したCT画像を解析する。得られた各画像に対し、画像解析ソフトウェア(Image J、MATLAB等)を用いて、申請者らが考案した低コントラスト解析法に基づいて、コントラスト、画像ノイズ等を評価し、被写体のサイズによって、コントラスト、画像ノイズ等がどの程度異なるか評価する予定である。 また、線量評価については、低コントラスト評価用ファントムの計算用モデルを作成し、CT装置とファントムを想定して線量計算体系を構築して、シミュレーション計算を行う。シミュレーション計算により得られた線量分布に基づいて、ファントムサイズによる線量の違いについて検討する。また、ファントム内の各模擬腫瘤位置での線量を推定し、画像ノイズ等の画質評価結果と線量評価結果から、線量と画質との関係性について検討する。そして、研究成果については、国内外で開催される学会や国際会議等で発表し、また、学術雑誌への投稿論文として国内外に発信する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 今年度中に低コントラスト評価ファントムを作成する予定であったが、研究発表用の旅費に割り充てる必要があったため、ファントムの作成資金に不足が生じた。 (使用計画) 次年度において、翌年度分の助成金と合わせて低コントラスト評価ファントムの作成費用に充てる。
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