がん幹細胞は、内臓脂肪組織をニッチとして隠れ、抗がん治療を回避すると近年報告されている。また「内臓脂肪組織は数多くのサイトカインやホルモンを 発現・分泌する活発な内分泌臓器」という概念が確立し、分泌されるアディポネクチン、ヒト腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、レプチンをはじめとするアディポサ イトカインと、冠動脈疾患、糖尿病等様々な病態との関連が明らかにされている。 一方放射線腫瘍学では心臓への照射により冠動脈疾患が増加することは知られているが、その機序は明らかではなく、心臓周囲脂肪組織をはじめとする内臓脂肪組織に着目した研究はない。 本研究の目的は、胸部放射線治療患者を対象に、胸部内臓脂肪組織への線量と、バイオマーカーとして定量化された血中アディポサイトカイン濃度、冠動脈病変との関連、またその予後との関係を明らかにすることである。さらに術前照射症例では、採取した内臓脂肪組織から直接アディポサイトカイン発現を定量化するとともに、脂肪組織由来がん幹細胞の定量評価を行い、予後との関連を探索的に解析する。本研究はcardio-endocrine-oncologyの先駆けになるものと考えられる。 当該年度は学会、書籍、論文等で情報収集を行い、ディポサイトカインの採血法や種類について選定を行い、当院の生命倫理審査委員会に研究プロトコールを提出する準備を行っていた。そして院内臨床試験として承認され、症例登録が実際に開始される予定であったが、令和元年8月1日付けで名古屋第一赤十字病院へ採用されたため、令和元年7月31日で現在の職を辞職することとなり、補助事業廃止を申請した。
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