研究課題/領域番号 |
18K07713
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
梁川 雅弘 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (00546872)
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研究分担者 |
新岡 宏彦 大阪大学, データビリティフロンティア機構, 特任准教授(常勤) (70552074)
富山 憲幸 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (50294070)
本多 修 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (80324755)
三宅 淳 大阪大学, 国際医工情報センター, 特任教授(常勤) (70344174)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 人工知能 / CT / 肺癌 / 病理組織診断 / 浸潤成分 / ニューラルネットワーク |
研究実績の概要 |
本研究は、肺癌の3次元CT画像データから病理組織診断の予測や病理学的浸潤成分による悪性度予測を行う為の人工知能システムを基礎工学部と共同で開発し、また、その画像学的診断能を放射線科医の診断能と比較・検討することで、放射線科医の為の画像診断補助システムの構築に役立て、それらの技術発展を目指すことである。 1. CT画像データの抽出 当施設における2008年度から2013年度までの肺癌手術症例のうち、肺腺癌の術後診断がついた症例の術前CTを見直し、90症例の0.625mm厚CT画像のDICOMデータを抽出することに成功した。過剰適合を防ぐ為にも、他施設データでの妥当性試験を行えるように、広島大学放射線科および国立がんセンターにも協力をお願いし、各施設の倫理委員会の承諾後に肺腺癌の診断がついた術前CT画像を各々108例、101例収集するすることに成功した。尚、当院での超高精細CTデータについては、症例を蓄積中である。 2. 人工知能の学習データの準備と人工知能の構築 画像データの使用が可能であった285例のCT画像データから肺癌原発巣のみを3次元データとして抽出した。人工知能に関しては、VGG-16、DenseNet-121を用いて2次元畳込みニューラルネットワーク(2D-CNN)を構築した。3D-CNNに関しては、2層の畳み込み層(CL)とマックスプーリング層(ML)を交互に配置した単純なタイプ(3D-CNNa)と6層のCLとMLを交互に配置し、batch normalizationとresidual connectionを組み込んだ複雑なタイプ(3D-CNNb)を構築した。出力層では2 nodes [非浸潤性腺癌、浸潤性腺癌(IVA)]もしくは3 nodes [上皮内癌(AIS), 微少浸潤性腺癌(MIA), 浸潤性腺癌(IVA)]の分類を行い、各々の結果の診断能を解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CT画像データの抽出であるが、対象とする肺腺癌の画像のDICOMデータを抽出することができた。更に、他施設の画像データの抽出も行え、本研究の目的の一つともいえる人工知能の汎化性の検証にも役立てることができていると判断する。ただ、現時点では、肺腺癌の浸潤成分のみの評価に焦点を当てており、血管浸潤、リンパ管浸潤、胸膜浸潤などに対する人工知能の評価はできていない為、今後進めて行く予定とする。人工知能の構築に関しても、当初、予定してた3D-CNNaのみに止まらず、より複雑な3D-CNNbの構築にも成功した点、また、比較対象としての2D-CNNの構築にも成功した点は、当初の計画以上の進捗と判断する。また、現時点で構築した人工知能を用いて、285症例(75例AIS、58例MIA、152例IVA)に対する2D-CNNと3D-CNNの診断性能を統計的に比較・検討済みである。以上より、本研究は、ほぼ順調に進行中と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
1.人工知能の性能向上および追加解析の為のデータ収集 昨年に引き続き、超高精細CTの画像データの収集も行い、現在、構築した人工知能の性能向上に役立てることができるかを検討する予定である。また、平成30年度は、浸潤成分を主体とした肺腺癌の病理組織分類のみに焦点を当てて、研究を推進してきたが、今後は可能な限り病理学的血管浸潤、リンパ管浸潤、胸膜浸潤、胸壁浸潤、心膜浸潤の有無についても教師データの構築を行っていきたいと考えている。 2.人工知能の診断過程の解析 人工知能の病理組織分類に関する診断能を検討できたが、その診断過程はブラックボックスである。今後の課題の一つとして、人工知能が肺腺癌の病理組織分類を行う上で、どこに着目して診断結果を出したのかを解明したいと考えている。診断過程を少しでも解明できれば、人工知能の診断結果の妥当性について少しでも理解が深まる可能性があると考える。Gradient-Weighted Class Activation Maps (Grad-CAMs)は、深層学習システムの着目部位を視覚化できる方法の一つであり、人工知能の着目部位をカラーマップで表記することができる。人工知能の着目部位を実際のCT画像と対比することで、その特徴量を抽出できる可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度は、人工知能構築とデータ解析に重きを置いた為、経費をほぼ物品費に割り当て、人工知能構築用のコンピューターソフトウェア、医用画像統計解析ソフトウェアの購入に計上した。本研究の成果の一部は、招待講演などにて紹介したが、本研究の詳細な成果を、平成31年度の国内学会や国際学会にて発表する予定としており、繰り越し金に関しては今年度の出張費に計上する予定である。
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