研究課題/領域番号 |
18K07714
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
野上 宗伸 神戸大学, 医学部附属病院, 特命准教授 (30464267)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | PET/MRI / 拡散強調画像 / 高速撮像法 / 定量解析 |
研究実績の概要 |
前年度行った,全身PET/MRI撮像の高速化に関する検討結果を元に,臨床症例で用いるためのプロトコールを作成した.これにより,従来20分前後を要していた全身撮像時間が10分程度に短縮され,本研究の対象となる去勢抵抗性前立腺癌の多発骨転移症例など,安静仰臥位を保つ事が困難である症例に対しても,侵襲を少なくするとともにPETの定量性や全身拡散強調画像(Diffusion weighted imaging with fat suppression)の画質を担保することが出来た. 骨シンチグラフィおよびSPECTデータの定量化(SUV,standardized uptake value)を行うためのパラメータ決定(BCF,Becquerel calibration factor)をファントムを用いて行い,現在の装置に最適化された定量値を得るための準備を行った. 全身PET/MRI撮像の高速撮像に関して,国際学会(米国核医学会 Society of Nuclear Medicine 2019)での発表を行った.また,最適化されたプロトコールを用いた診断能評価を行い,本年の米国核医学会にて発表予定である.最適化された骨シンチグラフィ・SPECTの定量的解析法を用いて,既存の画像データを解析し,治療効果判定の再現性や有用性につき検討を行った.本研究結果は本年中に学会発表予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画通り進捗している事項:全身PET/MRI撮像のための高速化プロトコールの確立を行い,実際に臨床症例に適応するとともに,その診断能の評価が可能となった.拡散強調画像の定量的解析のための,アプリケーションの準備と最適化を行った.骨シンチグラフィおよびSPECTの定量的解析のための,BCFの再測定を行い装置に最適な変換式を作成した. 計画から遅延している事項:昨年に引き続き,フッ化ナトリウム(NaF)合成体制の遅延が生じている.技術的な問題の以前に,放射性医薬品に精通した薬剤師の管理区域内ホットラボへの配属が,院内人的リソースの問題から困難である状況は昨年同様であり,また本年は年初からCOVID-19流行に伴う研究活動の制限が開始されたため,研究を目的とした薬剤師の配置がますます困難な状況となっている.さらに,本研究の対象となるRa-223治療を行う患者が近年減少傾向にあり,充分な症例数を得ることが出来ない可能性が生じている. 以上より,昨年に引き続き,PET/MRI検査および骨シンチグラフィ・SPECT検査の最適化に関する事項は進捗しているが,NaF合成のための主に薬剤師の配置について,依然として遅延しているため,全体としては進捗状況はやや遅れているのが現状である.
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今後の研究の推進方策 |
全身PET/MRIおよび拡散強調画像の至適撮像法に関する検討は引き続き行い,特に全身PET/MRIの高速化に関する検討は国際学会での発表を経た後,近々論文化を行う方針である.また,骨シンチグラフィ・SPECTの定量解析については,現状症例を得られないRa-223治療を行う去勢抵抗性前立腺癌症例に限らず,臨床的に行われている他の適応で撮像された骨シンチグラフィ・SPECTについて定量的に解析を行い,その有用性について検討を加える予定である. Ra-223療法に関しては近年全国的に治療実績が減少傾向にあり,これは他の治療法の出現により去勢抵抗性前立腺癌の骨転移症例に対する治療適応が変遷しつつあることが原因である.これを踏まえ,本研究計画も当初計画していたRa-223療法に限定せず,他の化学療法や内分泌療法を行った場合のPET/MRIおよび拡散強調画像,骨シンチグラフィ・SPECTの猶予性について,検討を行う必要があると考える.
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次年度使用額が生じた理由 |
NaF合成のための原材料や消耗品を含めた費用,薬剤師やオペレーターの人件費,謝金等の支払いがなかったため.これは院内における薬剤師配置に関する問題が起因となっており,人的配置に関する問題が該当年度内に解決しなかったため,対応する予算の施行がなかった.配置が完了次第,予算の使用が可能となるため,次年度以降に使用することとした.
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