研究課題
冠血流予備量比(fractional flow reserve: FFR)は、心筋虚血を招く冠動脈病変を検出する事ができ、経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention: PCI)の適応を判断するうえでのリファレンススタンダードである。ただし、FFR計測のためには心臓カテーテル検査にて狭窄前後の圧較差を計測しなければならず、侵襲的である。近年、冠動脈CTデータを、数値流体力学的に解析することでFFRを推測することが可能となり(CT-FFR)、非侵襲的な心筋虚血指標として期待されている。従来のCT-FFRの初期検討では感度、特異度とも85%程度と報告されている。しかし、本法は冠動脈CTの1つの時相の情報からのシミュレーションである点、最大充血状態の仮想が妥当であるか明らかでない点は問題である。それに対して拡張期の4つの時相から血管の経時的な構造変形と流体力学を融合した流体構造連成解析による新たなCT-FFRが開発され、従来の手法と異なる角度からの高精度なCT-FFRの算出が期待される。本研究により、最新のCT解析技術である流体構造連成解析によるCT-FFRの精度と特性を臨床的に明らかにした。また、多施設共同研究により、非侵襲的に冠動脈の機能的狭窄を評価するうえで貢献できる技術であることを示した。その研究成果はacademic radiology に採択された。(Acad Radiol. 2020 Feb 10;S1076-6332(20)30001-5.)。
2: おおむね順調に進展している
本年は心臓CTを受ける予定の患者様に対し引き続き臨床研究を遂行し、心臓CTのデータからCT-FFRを算出した。多施設共同研究により、非侵襲的に冠動脈の機能的狭窄を評価するうえで貢献できる技術であることを示した。
心臓CTを受ける予定の患者に対して引き続き臨床研究を遂行する。得られた心臓CTのデータから流体構造連成解析によるCT-FFRを算出し、侵襲的FFRを施行した患者を対象に、流体構造連成解析によるCT-FFRの臨床的意義を侵襲的FFRと比較して評価する。
国際学会への外国旅費、学会およびミーティングに参加して研究成果の公表および情報交換を行うための経費を計上していたが、予定以上に出席できず、次年度使用額が生じた。今年度はリモートでのミーティングできるシステムの構築、研究成果の学会および論文発表のためにかかる費用、貴重なデータに関してはハードディスクでの保存、活用のためこれらを使用する予定である。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Academic Radiology
巻: Feb 10 ページ: 30001-5.
10.1016/j.acra.2019.12.013.