研究課題/領域番号 |
18K07725
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
芝本 雄太 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (20144719)
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研究分担者 |
杉江 愛生 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (80509258)
岩田 宏満 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (40611588)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 適応応答 / ホルミシス / 低線量被曝 |
研究実績の概要 |
【目的】天然の鉱石から作られ低線量のα、β、γ線を放出するシート(商品名:ヌーシート)は、Ac-228やBr-77を含有していると考えられ、変形性関節症などによる慢性疼痛の軽減効果が報告されている。我々のグループは、このシート上で飼育した蚕の幼虫の成長が、コントロール群に比べて促進されることを報告した。今回はこのヌーシートについて、蚕の成長促進をもたらす至適線量(率)、幼若マウスに対する成長促進の有無、腫瘍細胞のマウスへの可移植性の変化などを検討した。 【方法】ヌーシートは2週類あり、重ねることにより1.7~22.4μSV/hの線量率が得られた。蚕は卵の時点から、コントロールシート群(0.3μSV/h)とヌーシート群に分けて飼育した。別の実験では、比較のため、孵化直後の蚕幼虫にX線を0.1~50Gy照射し、その後の成長を観察した。また3週齢Balb/c雌マウスを同様の2群に分けて飼育し、体重の変化を観察するとともに、10週の時点でEMT6細胞を1000個皮下移植し、生着率を観察した。 【結果】 蚕では、13.4と22.4μSV/hの線量率において体重増加促進が認められたが、それより低い線量率やX線の0.1または0.6Gyの1回照射では体重増加促進は見られなかった。マウスにおいてはヌーシートによる体重増加促進は観察されなかったが、EMT6腫瘍の生着までの日数が延長した。 【考察・結論】低線量放射線を放出するヌーシートは、蚕の成長を促進したが、マウスではその効果は認められなかった。マウスでは0週齢から飼育することが困難であることや、動物の大きさによる線量低下などの問題があり、蚕と同じ条件で実験することができなかったが、他の研究者からも報告されているように、腫瘍細胞の生着遅延効果は示唆された。低線量放射線持続被曝の影響については、今後さらに研究する価値があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年に英文原著論文と総説をそれぞれ1報ずつを国際雑誌に掲載することができたため、概ね順調と考えている。さらには、もう1報の論文も準備中であり、計3報以上の英文論文を見込んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は培養細胞を用いた研究に重点を置く。蚕の成長促進のメカニズムを検討するため、培養HSG細胞を用いて増殖刺激の有無を検討する。HSG細胞を2群に分けて、細胞数とコロニー形成率を経時的に比較する。また2、4、6週後に2~8Gyの照射を行い、細胞生存率を比較し、適応応答反応が見られるかどうかを検討する。さらには、4週間培養してから、2Gy照射後の1核あたりのγH2AX fociを数え、DNA二重鎖切断に対する効果を検討する。また20~100mGy程度の一回照射の後、間隔をおいて2Gyの照射を行い、その後のγH2AX fociの発生を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
他の研究費の余剰があったため、それを先に使用した。今年度は高価な試薬などの購入によりで予定どおりの支出が見込まれている。
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