研究課題/領域番号 |
18K07725
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
芝本 雄太 大阪大学, 大学院医学系研究科, 招へい教授 (20144719)
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研究分担者 |
杉江 愛生 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (80509258)
岩田 宏満 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (40611588)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 低線量放射線 / 直線閾値なし仮説 / γH2AX |
研究実績の概要 |
今年度は、低線量放射線照射の影響について、培養がん細胞を用いてDNA損傷修復の観点から検討した。特にヒトにおいてCTなどの放射線検査後のDNA損傷を評価する場合、どのタイミングで採血を行うのが適しているかを検討するための実験を行った。3種類の細胞に対して10-4000mGyの種々の線量を照射し、その後のγH2AXの発現を照射後15分から24時間にかけて経時的に分析し、細胞生存率との関係を検討した。照射後γH2AXの発現は15分後に高かったが、その後経時的に減少し、24時間後にはほぼ元のレベルに戻った。細胞生存率とγH2AXの相関は、照射後2時間の時点が最も高いと考えられた。これらの結果からは、放射線による画像検査後にγH2AXの測定を試みる場合は、検査直後に行うのは適当でなく、2時間後以降が適していることが示唆された。また検査後15分でγH2AXが上昇しているからといっても、それが発がん性を示すものではないことも示唆された。 全研究期間を通じては、低線量の放射線被曝でも何らかの害があるとする直線閾値なし仮説を否定する実験データが得られている。低線量放射線放出シートの上で飼育した蚕の幼虫は成長が促進されることを報告した(Dose-Response 2018)。また同じく低線量放射線放出シート上で飼育したマウスにおいては、腫瘍細胞を移植した後の腫瘍生着までの日数が、非照射マウスに比べて延長することが示された(Dose-Response 2018)。さらに同シート上で培養した細胞では放射線適応応答が認められた(Dose-Response 2019)。これらの結果は直線閾値なし仮説の見直しを求めるものと考えられた。
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