研究実績の概要 |
サルコイドーシスは、原因不明の全身性の肉芽腫性疾患で一般に予後良好な疾患である。しかし、心臓に病変が及ぶ心サルコイドーシスの場合には、房室伝導障害や心室性不整脈の発生頻度が高く、突然死の原因となる。心サルコイドーシスは、サルコイドーシスの予後を左右する最も重要な因子である。本研究は、心サルコイドーシスの活動性を評価するためMRI T1, T2, LGE mappingを開発することを目的とした。MRI T1, T2, LGE mappingは、心筋の浮腫や炎症の程度を数値化し、局在を明らかにする画像である。Mappingの中で、特にLGEはGadolinium造影剤を用いて炎症や線維化を検出する画像となる。我々はLGEの進展範囲が広範囲であれば、房室伝導障害や心室性不整脈の発生頻度が高く、突然死を含めた心事故発生が高いことを明らかにした。T1, T2 mappingについては、予後との関連はないものの活動性炎症の検出には有効な非侵襲的手段であり、ステロイドや免疫抑制剤の治療効果を判定するのに効果的であった。T1, T2 mappingは、心サルコイドーシスと同じ病態である炎症性疾患のCOVID-19を含めたウイルス性心筋炎や心臓移植後の拒絶反応を診断する際にも有効であった。本研究では、心サルコイドーシスの局所心筋の壁運動評価のため、心筋ストレイン(歪み)を算出している。これは心臓シネMRI画像をfeature-tracking法を用いて心筋輪郭を自動抽出することによって得ることができる。我々は、従来心臓MRIに利用されていたfeature-tracking法を心臓PET画像に世界で初めて応用し、心臓PET画像から心筋ストレインを計算することに成功した。心サルコイドーシスの診断にはFDG-PETによる糖代謝イメージが必要不可欠である。糖代謝と同時に局所機能が評価可能となる心筋PETストレイン解析は、心サルコイドーシスの新たな生理学的情報を得られると期待する。
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