研究課題/領域番号 |
18K07736
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
浅井 義行 近畿大学, 大学病院, 技術職員 (30639307)
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研究分担者 |
山室 美佳 近畿大学, 大学病院, 技術職員 (90837866)
村上 卓道 神戸大学, 医学研究科, 教授 (20252653)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ROC / 乳腺密度 / 病変見落とし / 乳房等価ファントム |
研究実績の概要 |
今年度は観察者応答特性(ROC)実験により乳腺密度と病変見落とし率の関係を定量化した。従来から乳腺密度が高くなると病変見落とし率が増加することが経験的に知られていたが、定量的分析には至っていなかった。従来の臨床画像を用いた評価としては中間期癌を用いた報告があるが、中間期癌は発症時期が不詳であるため評価の信頼度に問題が生じる。そのため、乳房ファントムを用いた定量的評価が期待されているが、乳腺密度を任意に変化させることができる乳房等価ファントムが存在しないことから定量評価が困難であった。我々はマンモグラフィで用いる全X線エネルギー範囲において実乳房と等価なX線減弱を示す乳腺密度可変型乳房ファントムを開発し、微小石灰化、腫瘤、スピキュラの3パターンの模擬病変に対する乳腺密度と病変見落とし率の関係を定量化することに成功した。模擬病変3パターンを総合的に見ると、乳腺密度25%を基準とすれば、乳腺密度50%では見落とし率がその中で、例えば微小石灰化のような病変はある特定の乳腺密度値を超えると急激に見落とし率が増加するといった閾値が存在する可能性が示唆された。また、スピキュラのような低周波数低コントラストの病変は乳房内乳腺組織の走行や分布といった背景組織の空間周波数特性の影響を強く受けることを見出した。これらの成果は、近い将来わが国において個別化乳癌検診が開始された場合、医師が被験者に検診の精度や信頼度を個別に説明する際に有用となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ROC実験の観察者として検診マンモグラフィ専門認定を持つ診療放射線技師を起用したが、当初の研究計画においては必要に応じて乳腺専門医師の観察も検討していた。まず、認定放射線技師だけで観察した解析結果を国際科学誌へ投稿したところ、医師であるEditor及びReviewerが医師による観察実験の追加を勧めてきたが、我が国における検診マンモグラフィ専門認定放射線技師が読影についても訓練を受けたあと読影を含む専門試験に合格していること等を説明したところ、当方の主張が認められ、医師による観察実験と同等であると判断され掲載されることとなった。このように医師による追加観察を省略することができ、このことが研究の進展につながったため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、① 3次元乳腺密度計測、② マンモグラフィ撮影前の乳腺密度予測、③ 乳腺密度と病変見落とし率の関係の定量化という3つの課題から成っている。このうち③については上述したとおり論文掲載まで含めほぼ完遂された。①と②についてもおおむね順調に遂行しているが、計測精度や予測精度の追及には終着点がなく、どこまで追求するか、どこで打ち切るかが問題である。①②ともおおむね精度はプラトーに近づきつつあるように見受けられるため、最終年度の年度初旬にはデータをまとめ、以後、国際学会での発表や国際医科学雑誌への掲載に尽力する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍にて国際学会等におけるオンサイトでの学術成果発表ができなくなったため.次年度は積極的に成果を発表する予定である.
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