本研究では、放射線由来の活性化学種の生成およびそれによる酸化反応量の定量測定に基づき、生物応答の引き金となる初期化学反応の解析を試みた。X線照射により水中に生じる高濃度H2O2クラスター間の距離を測定した結果、40-50 nm程度であることを明らかにした。放射線のLETが大きいほど酸素非依存的なH2O2生成が増加し、酸素依存的なH2O2が減少することを確認した。放射線によるプラスミドDNA切断は、大気下よりも低酸素下で増加することを認めた。放射線が油脂溶液中に生成するラジカルを簡便かつ定量的に測定できる可能性を見出した。水中の溶存酸素は、放射線によるROSの生成量を必ずしも増加させなかった。
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