研究実績の概要 |
我々は線量、照射スケジュールがより臨床に近いpreclinical modelを構築し、その過程で生じる免疫応答を明らかにする目的で研究を行った。さらに、細胞株実験で生じた免疫応答が実際の癌組織でも生じることを明らかにする目的で前向き観察研究として放射線治療中癌組織検体の解析を行った。 60Gy/20frの時系列の間で得られたRNA seqの結果をenrichment解析、pathway解析を行い、type Iインターフェロンによる免疫応答が生じており、MHC class I, PD-L1を含む免疫応答に関与する遺伝子群が線量依存的に増加することを明らかにした。またこれらの制御因子として知られるIRF, pSTAT1がタンパク質レベルで上昇していることを確認した。 我々は照射後、cGAS-STING経路(5)に加え、IFNγ刺激で誘導されるPD-L1発現モデルを作成し、この証明を試みた。我々はKYSE-450細胞株でCRISPR-cas9を用いてSTING, IFNAR1, STT1, IRF1のノックアウト細胞を作成し、これらの遺伝子が放射線によるがん免疫応答に必須であることを確認した。さらにこのpreclinical modelで明らかになった応答pathwayが、実際の放射線治療中の癌患者の組織検体で活性化していることを確認した。倫理委員会承認のプロトコール(IRB2018-101)の元、microarray解析により放射線治療前後の癌組織を比較解析した結果、STING/IRF/STAT1の活性化が確認された。 このように我々は臨床での治療を可能な限り再現したpreclinical model構築と、細胞実験、検体解析から放射線による免疫応答のメカニズムを証明した。(論文投稿中)
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