研究課題/領域番号 |
18K07743
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
岩井 岳夫 山形大学, 医学部, 教授 (30272529)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 重粒子線治療 / 核磁気共鳴画像誘導 / モンテカルロシミュレーション / 二次粒子 / 線量分布 |
研究実績の概要 |
加速した陽子や炭素を腫瘍に照射し、がんを治療する粒子線治療は、ブラッグピークによる優れた線量集中性が大きな利点である。標的となる腫瘍は、照射の最中でも患者の呼吸や運動に伴って変位するので、利点を最大限に発揮するためには腫瘍の位置や形状を照射中にモニタリングすることが理想的である。光子線治療においては、核磁気共鳴画像(MRI)によって標的をモニターし、「見ながら撃つ」装置が近年開発され、極めて高い注目を浴びている。粒子線治療においてもこうした「見ながら撃つ」ニーズが今後高まると予想されるが、これを実現するためにはイメージング用の高磁場(1.5~3T)の中で一次ビームおよび二次粒子ともにローレンツ力を受けることになるので、磁場による偏向と線量分布への影響を評価する必要がある。本研究では、水中における磁場によるビームの偏向と線量分布への影響をモンテカルロシミュレーションによって評価した。 モンテカルロシミュレーションにはPHITSを使用した。水ファントム中に均一磁場を設定し、治療で用いるエネルギーで炭素を入射し、粒子の軌道および線量分布への影響を評価した。 磁場中でのビーム軌道はローレンツ力により偏向するが、終端に近づくにつれ曲率半径が小さくなる曲線を描いた。炭素線から発生する二次陽子の挙動を分析したところ、ファントムから飛び出した陽子は大きい弧を描いて入射面に再入射する(Fragment Return Effect)ものもあることが確認された。しかしながらFragment Return Effectの線量分布への影響はごく限定的であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はモンテカルロ法による粒子輸送計算コードによって入射粒子および二次粒子の運動を計算し、MRI磁場による線量分布への影響を評価する。ビーム条件としては山形大学重粒子線治療施設で想定されるスキャニング用のペンシルビームを用いる。粒子輸送計算コードには国産のコードであるParticle and Heavy Ion Transport code System (PHITS) を使用し、一次ビームのみならず2次電子や核破砕片の運動への磁場の影響、さらには線量分布における磁場の影響を定量的に評価する。研究計画において、明らかにする項目は以下とした。 1) 炭素ビーム軌道への磁場の影響 2) 線量分布への磁場の影響 (ア) 1次ビームによる線量 (イ) δ線による線量 (ウ) 二次粒子(陽子、ヘリウム)による線量 3) 治療計画に適用するためのビームモデルの導出 上記のうち、1), 2)(ア)(イ)(ウ)までが本年度ほぼ達成できがので、おおむね順調に進捗していると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では治療計画に適用するための解析的ビームモデルの導出を目標としていたが、モンテカルロ法による線量分布アルゴリズムにおいて、核磁気共鳴画像誘導で付加される現実的な磁場分布を取り入れる方策について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
計算用ワークステーションの購入を予定していたが、平成30年度は予定額より低価格の物を調達して使用したため、次年度使用額が生じた。平成31年度は、この使用額を加えてより高性能の計算機を導入し、研究の効率化につなげる計画である。
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