研究課題
腎臓は、投与薬物の排泄臓器として重要な役割を果たしており、正確な腎排泄機能の測定は臨床上重要である。MRI・CT造影剤や白金系抗がん剤等のように、高い投与濃度の場合、投与薬物が糸球体濾過と近位尿細管から分泌されるが、尿細管分泌機序や尿細管上皮細胞集積性が十分に解明されていない。本研究では、臨床検査で副作用が問題となっている薬物の近位尿細管分泌機序と尿細管上皮細胞集積性を解明し、近位尿細管分泌量を正確かつ特異的に定量測定可能な核医学画像測定法の開発を目指す。申請者は、現在臨床使用されている放射性医薬品とCT造影剤の腎排泄機序を解明するために腎臓の代表的な薬物トランスポータ強制発現系細胞と単一強制発現ベシクルを用いて、令和元年度には、腎機能測定用核医学画像診断薬[99mTc]DMSAの腎皮質集積が、腎臓の腎尿細管血管側に発現しているorganic anion transporter (OAT)3の寄与を見出し、令和2年度には、[99mTc]DMSAが尿細管基底側に主に発現している薬物トランスポータのうちmultidrug resistance associated protein (MRP)2との弱い親和性も確認した。その後、OATやMRPを阻害したマウスに[99mTc]DMSAを投与したところ、正常マウスと比較して、[99mTc]DMSAの腎皮質集積が急激に低下したため、[99mTc]DMSAは腎皮質内にOAT3を介して取り込まれ、MRP2からの排泄は少なく、腎皮質細胞への滞留機序を解明した。我々は、このMRP2が非イオン性X線CT造影剤の腎排泄機序にも関与することを見出したため、放射性医薬品のみならず、細胞膜透過性がないと言われている非イオン性X線CT造影剤の腎排泄機序として、世界で初めて薬物トランスポータの関与を発見した。
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