研究課題/領域番号 |
18K07748
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
池田 充 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 教授 (50184437)
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研究分担者 |
今井 國治 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 教授 (20335053)
川浦 稚代 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 講師 (60324422)
藤井 啓輔 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 講師 (40469937)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 画質評価 / 被ばく線量 / X線CT |
研究実績の概要 |
雑音を量子雑音に限定した場合のX線CT画像上の任意のROI内の「空間領域」におけるCT値の分散の「ensemble領域」おける期待値をX線光子束の直線状の減弱のみをLambert-Beerの法則に基づいて解析的に計算することについての検討を実施し、直接的なフィルタ補正逆投影法による画像再構成を使用した仮想的なX線CT撮影系を使用して同様なモデルによって計算するシミュレーションを実施することによって、同計算方式の精度の検証を実施した。まず、これまでに実施していなかった、管電流変調を適応した場合とbow-tieフィルタを設定した場合についての検討を実施し、いずれの場合にも解析的な計算方法の精度は高いものと言える結果を得た。続いて、非常に膨大な計算時間を要するためこれまではあまり実施されていなかった、実際の診断時に照射するX線量に相当する光子数を使用した、光子と物質との相互作用を考慮したモンテカルロ・シミュレーションを実施し、短時間で精度の高い推定が可能なWunderlichらによりband-restricted estimationと名付けられた推定法を使用することによって、同期待値の解析的な計算方法の精度に関する検討を改めて実施した。この結果、モンテカルロ・シミュレーションによって作成されたCT画像の「空間領域」における雑音分散の「ensemble領域」における期待値の推定値は、X線光子束の直線状の減弱のみをLambert-Beerの法則に基づいて解析的に計算した値と比べ最大1.67倍ほどの差が認められたが、両者間のピアソンの積率相関係数は0.943となり、両者の間には非常に強い線形相関が認められ、両者は相対値としてみた際には高い精度で一致していることが認められた。また、両者の値の差は、考慮している光子数の差等によって生じていると考えられる結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実際の診断時に照射するX線量に相当する光子数を使用した、光子と物質との相互作用を考慮したモンテカルロ・シミュレーションによる(解析的な計算方式の)検証を実施したが、事前の予想通り、このシミュレーションには莫大な時間がかかった。同シミュレーションは、公開コードである”EGS5"を使用して実施したが、計算時間の短縮のため、MPIを使用して並列化した”EGS5-MPI"を合わせて使用した。EGS5やMPIの使用にあたっては、技術的に困難な課題に色々と直面し、予想外の時間を要したが、既存の計算機資源を使用するなどして、実用的な時間と言える時間ではないが、モンテカルロ・シミュレーションを使用した仮想的なX線撮影装置を使用したX線CT画像を得ることができるようになった。実際の診断時に照射するX線量に相当する光子数を使用したモンテカルロ・シミュレーションの実施には、現時点では改良すべき点がかなりあるが、Wunderlichらによるband-restricted estimationを使用した雑音分散の推定が可能な数のCT画像を具体的に得ることができたことは、当初の計画通りの進展が認められたと自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
X線検出器に到達するX線量を、数値ファントム中をX線が通過する際に、散乱線も考慮した個々の画素領域における 被ばく線量の推定も可能なモンテカルロシミュレーショ ンによって推定する具体的な計算方式について、今年度の実施結果を踏まえて改良を実施する。ここで、名古屋大学の情報基盤センターのコンピュータシステムを利用した高速化の方法についての検討を進める。この検討と同時に、市販のX 線 CT 検査装置を使用して、CT dose intex (CTDI) ファントムを含む被ばく線量測定用ファントムを用いて被ばく線量を実測した値との比較をすることによって、同シミュレーションの推定精度が十分であることを実測データとの比較によって実施する。 また、X 線検出器に到達するX線量のゆらぎ(量子雑音)について、これまでの検討では到達するX線量の平均値をパラメータである平均値とするポアソン分布に従うものして実施してきたが、モンテカルロ・シミュレーションでは、X線発生の際の光子数のゆらぎをポアソン分布として与える方法も考えられるため、同シミュレーションではX線量のゆらぎを与える方法として2種類の方法が考えられる。しかしながら、この2種類の方法の整合性には不明な点がある。また、これまでの検討ではX線検出器は単純なquantum counterとしてモデル化して実施してきたが、実際の商用機のX線検出器では同モデルには従わないことが知られていて、より実際に近いモデルとの比較検討が必要である。これらの点に関する検討も実施するものとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
実際の診断時に照射するX線量に相当する光子数を使用した、光子と物質との相互作用を考慮したモンテカルロ・シミュレーションに長時間を要したため、雑音分散の推定が可能な数のCT画像を具体的に得ることに時間がかかり、成果発表の段階に至らなかったため、関連する予算を使用しなかった。一方、使用したソフトウェアは名古屋大学でサイトライセンス取得しているものと無料で使用できるもののみを使用し、また、既存の計算機資源を利用して計算を実施することができたので、これらに関連する予算の使用は当初の計画より少なくなった。 次年度では、ワークステーションの購入費として使用するとともに、名古屋大学情報連携基盤センターのサイトライセンスと計算機の使用料として使用し、また、成果発表のための旅費等に使用する予定である。
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