放射線治療時の局所照射時に照射部位ではない臓器に起こるアブスコパル効果をとらえ、BNCTプラス免疫療法のプロトコルを提案することを目標とした。放射線感受性の異なる3種類のマウスのうち特に放射線感受性の高いマウスで頭部への中性子部分照射で免疫機のの低下があったので頭部中性子照射後の中性子照射部位から外れた位置にある脾臓を経時的に観察して照射後3か月以降の晩発影響としてのアブスコパル効果を解析した。 放射線高感受性マウスはDNA二重鎖切断の修復障害により放射線高感受性を示すC.B-17 SCIDマウスを用い、近交系Balb/cおよびC3Hマウスの反応と比較した。脾臓のマクロ変化については照射後4カ月時点で、体重比の重量比較でSCID マウスで70%、Balb/cマウスで68%に認められたが、C3Hマウスには脾臓の退縮は求められなかった。 頭部中性子照射4カ月後の免疫応答は、ガンマ線の頭部部分照射時の脾細胞の免疫応答に変化に比べて、いずれも免疫応答が低く、特に放射線感受性の高いSCIDマウスでは照射後長期間免疫応答が回復せずに中性子照射部位に皮下膿瘍が認められた。 さらに、Balb/cマウスでは頭部中性子照射後18カ月後に脾臓の腫大が認められ組織病理検査で脾臓原発の悪性リンパ腫が高率に認められた。 Balb/cマウスはガンマ線の全身照射後に他種のマウスに比べて高率に放射線照射後に発がんが認められる。しかし、部分照射後に照射部以外の臓器での発がんの報告はされていない。頭部部分照射後の照射部位ではない脾臓に脾原発性悪性リンパ腫が発症した事実は非常に貴重な発見である。この結果から頭部への部分中性子照射の晩発影響は遺伝子背景の違いで非常に異なることが分かった。BNCTプラス免疫療法のプロトコルについて、治療効果向上のためには患者自身の遺伝子情報の違いにより対策を講じる必要があることが示唆された。
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