研究課題/領域番号 |
18K07753
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
椎木 健裕 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (30610456)
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研究分担者 |
藤井 文武 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (30274179)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 深層学習 / 敵対的生成ネットワーク / 医用画像処理 / 四次元放射線治療 / 動体追跡放射線治療 |
研究実績の概要 |
肺腫瘍に対して,超高速に放射線の照射が可能である超高線量率照射能力を持つ医療用加速器と腫瘍近傍に留置された金属マーカの位置を透視画像を用いてリアルタイムに認識する新しい動体追跡システムを用い,金属マーカが特定の位置に来た時のみ超高線量率で放射線照射を行う超高線量率四次元動体追跡照射の臨床応用を行ってきた.しかし,本治療は,X線透視画像を用いて治療中の腫瘍の呼吸性移動をリアルタイムに観測するため,高コントラスト・低ノイズの透視画像が必要となる.これらの条件の透視画像を取得するには,高線量の透視画像が必要となり患者への被ばくが問題となる.動体追跡装置は特殊装置であるため,透視撮影条件の最適化が難しく,被ばく線量低減を行うことが難しい.そこで,本年度は,深層学習を用いた低被ばく線量透視画像から高線量透視画像生成モデルの開発を行った. 1回目の放射線治療時にて,100kV,40mA,4msと100kV,80mA,4msの低線量と高線量のX線透視画像をそれぞれ4200枚取得した.これらの画像を用いて,敵対的生成ネットワーク(GAN)モデルを使用して,低線量X線透視画像から高線量X線透視画像を生成するモデルを作成した.モデルは生成器がResNet,識別器がCNNを用いたCycle GANモデルを開発した.2回目の治療時に得られた低線量X線透視画像と開発したGANモデルを用いて,疑似的な高線量X線透視画像を生成した.これらの画像と治療時に取得される高線量X線透視画像をSSID(Structural Similarity Index)を用いて画像生成精度を評価した.また,腫瘍近傍に留置された金マーカの追跡精度を評価した.開発したモデルによって生成させた高線量X線透視画像は,実際に得られた画像と同等の画像を生成することが可能で,金マーカの追跡も可能であった.また,開発モデルを使用することで,X線透視被ばく線量を1/2に低減する可能性を示唆した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
X線透視画像中の腫瘍認識モデルのみでなく,X線透視被ばく線量低減モデルの開発も行うことができた.
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今後の研究の推進方策 |
腫瘍認識モデルの改良に取り掛かる.初年度に作成した肺腫瘍認識モデルは,医療従事者のマニュアル作業による教師学習用データ作成が問題となっていた.今後は,教師学習用データを治療計画時に取得されるCT画像から作成するData Augmentationの手法を開発し,モデル開発へ応用していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
システム構築用GPU-PCを購入予定としていたが,PC無しに予備実験を実施することが可能であったため,次年度使用額が生じてしまった. 来年度は最終年度となるため,研究成果報告のための旅費・英文校正・論文掲載料に使用する予定である.
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