研究課題/領域番号 |
18K07756
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
淵上 剛志 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 准教授 (30432206)
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研究分担者 |
吉田 さくら 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 助教 (40736419)
中山 守雄 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 教授 (60164373) [辞退]
宮成 悠介 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究, 生命創成探究センター, 特任准教授 (60469608)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ナノボディ / 膵臓癌 / PET / 分子イメージング |
研究実績の概要 |
本研究では、PETおよび光音響イメージングを用いた膵臓がんの早期診断方法の確立を最終目標として、高い特異性と優れた体内動態を兼ね備えたラクダ抗体(ナノボディ)を基盤とした新規分子プローブの開発を目的とした。分子プローブの標的蛋白タンパク質として、ADAM8やsurvivinなどの膵臓がんの初期段階(PanIN III)より高発現しており、予後不良に深く関与しているタンパク質を選択した。 前年度までに、ADAM8とsurvivinに結合性を示すナノボディのクローンをそれぞれ6個及び7個同定した。本年度は、さらにナノボディのスクリーニングを進めていき、Biacoreにて標的タンパク質への親和性を検討した。Survivinに対してKd値が1.52 nMの親和性を有するナノボディが見出された。また、ADAM8に対しては、Kd値が3.93 nMの親和性を有するナノボディが見出された。また、これらのナノボディは、蛍光顕微鏡を用いた検討により、標的タンパク質へ特異的に結合していることが見出された。現在、これらのナノボディにNOTAなどの放射性ガリウムを配位できる置換基の導入を検討しており、核医学イメージング剤への展開を行っている。なお、survivin標的分子に関しては、独自のペプチド分子の開発を行っており、いくつかのペプチド分子は、膵臓癌細胞においてsurvivinの発現に応じた細胞内集積を示し、さらにアポトーシスを伴う強い抗腫瘍活性も有することを見出した。従って、survivinの膵臓癌イメージング剤や内用放射線治療薬剤などの治療薬の標的としての有用性が示された(Fuchigami, Cancer Sci, 2020)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
標的タンパク質に対して高い親和性、選択性を有するナノボディのクローンを見出すことに成功し、今後の核医学イメージング剤への展開が大いに期待される。
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今後の研究の推進方策 |
今年度得られたナノボディのクローンにNOTA修飾して、放射性ガリウム標識薬剤へと展開していき、膵臓癌の早期診断を可能とするPET薬剤としての有用性を評価していく。 今後はさらにGlypican-1などの別の標的に対するナノボディの作出を目指し、前年度と同様にファージディスプレイ法にて標的へ親和性を示すナノボディのスクリーニングを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
放射性ガリウム標識ナノボディの合成や評価を本年度は行えなかったため、次年度にそれらの研究に必要な化学薬品、放射性化合物、細胞実験、および動物実験のための費用に使用する計画とした。
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