研究課題
悪性腫瘍の進行度を評価するTNM分類は、診断・治療技術の進歩に伴い改訂が繰り返されてきた。口腔癌について、T因子の規定は最大径によって2 cm以下、2-4 cm、4 cm超に分類されていたが、2017年1月改訂の第8版では、腫瘍浸潤の深さ(深達度)が追加された。深達度は術後病理所見によって粘膜面(基底膜)から最深部までの距離と定義され、5 mm未満、5-10 mm、10 mm超に層別されている。つまり、cm単位の最大径からmm単位の内部構造へ詳細な評価が必要となった。また、深達度は頸部リンパ節転移の予測指標とされ、術前に評価可能であれば、治療方針の決定に重要と考えられる。術前の臨床T分類として、深達度に関する画像評価法は確立していない。病理学的T分類に沿って、画像診断でも粘膜面から最深部までの垂直距離を計測すべきであるが、粘膜面の同定が困難な場合、あるいは撮像断面が浸潤方向と異なる場合、深達度の評価は不確実となる。また、画像診断には観察者間変動が知られており、再現性の高い評価法が求められる。本研究は腫瘍と正常臓器の3次元的位置関係から深達度を計測するMRI評価法の確立を目的とする。さらに、治療前画像診断における深達度と頸部リンパ節転移の関連を明らかにし、治療方針決定への応用を目指す。口腔癌の中で最も高頻度の舌癌を対象に術前MRIによる深達度を評価し、術後の病理学的T分類と比較した。2名の観察者が深達度を評価した結果、症例毎に適した計測法は異なっており、適した計測法では観察者間変動が少ない傾向にあった。症例毎に腫瘍と正常臓器の位置関係から適した計測法を選択することによって、深達度評価の正確性や再現性が向上することを明らかにした。さらに、舌癌の術前MRIを用いた深達度評価がリンパ節再発の予測因子となる可能性を見いだした。
すべて 2021
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Oral Radiol
巻: - ページ: -
10.1007/s11282-020-00505-3