研究課題/領域番号 |
18K07761
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
荻野 浩幸 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 高度医療教育研究センター教授 (60315885)
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研究分担者 |
原 眞咲 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 高度医療教育研究センター教授 (50244562)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 肝細胞癌 / 陽子線治療 |
研究実績の概要 |
2015年以降に肝細胞癌陽子線治療を施行した82例のうち、1年以上の経過観察で再発のなかった症例の経時的な腫瘍サイズの変化と、EOB-MRIによる造影パターンをタイプ分けし、データベースを作成し、EOB-MRIと腫瘍マーカー(AFPとPIVKA-II)を陽子線治療前、治療後3か月ごとに経時的に測定したところ、腫瘍マーカーについては一過性に治療前よりも上昇を示すFlare現象と呼ばれるパターンを示す患者がAFPで5.9%、PIVKA-IIでは39%いることを明らかにすることができた。特に腫瘍サイズが縮小しているのにも関わらず数値が一過性に上昇する症例があることもわかり、腫瘍マーカーの上昇時には特にPIVKA-IIにおいては偽陽性となる可能性が低くなく注意が必要であることが判明した。 画像解析については非再発時のパターンを明らかにするために腫瘍内部構造に関する造影パターン化を進め、①腫瘍縮小を伴いかつ内部造影が早期相で減衰するパターン、②腫瘍縮小を認めるが内部造影が残存するパターン、③腫瘍サイズには変化がなく内部造影が減衰するパターン、④一過性に増大した後に縮小に転じるパターンに分類した。再発との鑑別が問題となるのは④のパターンであるが、5.1%に照射後の一過性の増大が認められたが造影早期相での造影パターンは治療前よりも軽度に減弱していることが判明し、再発との鑑別の一助になると考えている。 今後は内部構造に着目した変化の解析を行い、総合的な治療効果判定法の検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度作成した肝細胞癌陽子線治療後のデータベースにより腫瘍マーカーするFlare現象と呼ばれる現象の発生頻度を明らかにすることができ、腫瘍サイズに着目した検討でもpseudoprogressionと呼ばれる一過性増大の頻度が5%程度に認められることを明らかにすることができた。pseudoprogressionの造影パターンの検討も行うことができ、いずれの症例においても造影早期相での腫瘍濃染は認められるものの治療前との比較では正常肝との比が低下していることが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は腫瘍内部構造の形態ならびに血流変化に重点をおいた非再発例群と再発例群の比較データを統計的に処理して解析を進めることで、腫瘍マーカー、腫瘍サイズ、内部構造変化の重み付けなどを考慮し、再発例の早期検出を主目的とした治療効果判定法の確立を目指す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
画像および腫瘍マーカーによるデータベース解析は順調に進んでいるが、年度内に当初発表を考えていた学会提出時までに追加データの解析をおこなう必要が生じ、予定していた学会での発表を見送ったから。
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