研究課題/領域番号 |
18K07773
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
寅松 千枝 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (90421825)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Theranostics / autoactivation / in beam PET / washout effect / particle therapy |
研究実績の概要 |
粒子線治療の線量分布検証法として陽電子放出断層撮影(PET)が用いられてきた。照射粒子線と患者体内での原子核破砕反応により発生する陽電子放出核をPETで可視化するという原理である。一方、発生した陽電子放出核生物学的洗い出し効果が治療ビーム照射に対する腫瘍応答性を示すという可能性が議論されており、この効果を定量評価することで診断の指標として利用できる可能性がある。そこで本研究では腫瘍組織の状態と生物学的洗い出し効果の関連性について調べることを目的として、担癌ヌードラットに対して11Cビームを照射しin-beam PET撮像を行った。そして放射性薬物動態解析モデルにより入射11Cビームの生物学的洗い出し速度を算出した。 4匹のヌードラットの左肩(皮下組織)にC6グリオーマ細胞を移植し11Cビームによる照射実験を行った。測定には、高い検出感度を有するDOI-PET開発機を用いた。まず、11Cビームを腫瘍組織(左肩)に照射し、照射と同時にPET測定を開始した。11Cが十分に減衰した後、同様に正常組織(右肩皮下組織)に対する照射実験を行った。そして減衰曲線 (TAC) を取得した。2つの速度成分(中間速度・遅い速度成分)を仮定したmultiple component modelを用いて入射ビームの生物学半減期係数を導出した。 その結果、中間速度成分の崩壊係数の平均値は腫瘍組織において正常組織と同等であった。これに対し、3匹のラットにおいて、正常組織と比較し腫瘍組織において早い洗い出し速度が得られた。これは腫瘍組織中の新生がん血管壁の血管透過性が亢進している作用が反映されたと考えられる。また、1匹のラットの病理画像では腫瘍内部において組織の壊死が生じている様子が観察された。そして壊死により血流不足が起こり生物学的洗い出し速度が影響を受けることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は緊急事態宣言を受けて実験施設が閉鎖となり、4回予定していたうちの2回の実験が実施できない事態となった。また、動物実験において免疫力の弱いヌードラットを使用しているため体温管理が難しく、実験中に死亡してしまう不測の事態も起こった。 実施できた2回の実験結果により、予測したデータの取得には成功したが、結果としてまとめるには統計が足りていない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を1年間延長して今年度実施できなかった分の実験を申請しており、既に許可されている。今後、充分な統計量のデータを取得次第、結果を纏める。関連研究者と意見交換した後に、研究成果を学会発表や論文として公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は緊急事態宣言を受けて実験施設が閉鎖となり、4回予定していたうちの2回の実験が実施できない事態となった。十分な統計量のデータを取得するため、継続して実験を行う必要があり、次年度使用額が生じた。ヌードラットと麻酔液の購入に使用予定である。
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