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2020 年度 実施状況報告書

静止期の細胞における重粒子線照射後のDNA二本鎖切断修復機構の解析

研究課題

研究課題/領域番号 18K07775
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

泉 雅子  国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 専任研究員 (00280719)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード重粒子線 / DNA修復
研究実績の概要

昨年度までの阻害剤や変異株を用いた解析から、重粒子線照射後の主要なDNA二本鎖切断修復経路は非相同末端結合(NHEJ)であること、重粒子線のLETが高くなるほど修復のタイムコースが遅くなることが明らかになっている。一方、生存率曲線を元にした解析からは、LETが高くなるほど相同組換え(HR)の寄与の割合が高くなることが報告されていた。そこで、実際にHRによる修復効率がLETに依存しているか調べた。HeLa細胞をDNA複製阻害剤存在下でX線や重粒子線で照射し、G2期の細胞におけるリン酸化型ヒストンH2AX(γ-H2AX)のフォーカス形成のタイムコースを蛍光抗体法により調べた。X線照射後は50%のγ-H2AXがRad51と共局在したのに対して、炭素(LET=80keV/μm)、アルゴン(LET=300keV/μm)照射では70%のγ-H2AXがRad51と共局在しており、重粒子線ではHRが起こりやすくなっていることが示唆された。一方、Rad51フォーカスのタイムコースはγ-H2AXフォーカスのタイムコースと同様にLETに依存して遅くなった。すなわち、重粒子線ではHRへ反応が進みやすいものの、その後の反応は効率よく進行しないことが示唆された。
静止期における重粒子線照射によるリスク評価を行うため、静止期に同調したNB1RGB細胞に照射を行い、修復の時間を与えたのちに増殖期に導入して生存率を調べることを検討した。しかしながら、NB1RGB細胞のコロニー形成能が細胞の密度に大きく依存することが判明したため、適切な細胞密度について条件検討を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2020年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で加速器の運転スケジュールに大幅な遅延が生じ、予定していた照射実験が半分ほどしかできなかったため、やや遅れている。

今後の研究の推進方策

重粒子線照射後、経時的にクロマチン結合画分を得て、クロマチン上にリクルートされる修復タンパク質の種類や量が、線量やLET、細胞周期と関連があるかをウエスタンブロットにより解析する。また、重粒子線照射後、架橋剤で処理した後に超音波処理によりDNAを断片化し、修復タンパク質がDNA上に結合した状態でDNAを回収して、リン酸化型ヒストンH2AXに対する抗体で免疫沈降を行う。得られた免疫沈降物を質量分析により網羅的に解析し、DNA損傷部位にどのようなタンパク質が集合しているかを明らかにする。
静止期に同調した細胞に重粒子線を照射し、生存率をコロニー形成法により得る。また、照射後の細胞を再度増殖サイクルに導入したのちにM期に同調して染色体異常を検出することによりリスクを評価する。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルスの感染拡大により、当初計画していたよりも照射実験の回数が少なくなったことに加え、国内・海外出張を取りやめたことにより次年度使用が生じた。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Kinetics of Rad51 foci in G2 phase after heavy-ion irradiation in mammalian cells2021

    • 著者名/発表者名
      M. Izumi and T. Abe
    • 雑誌名

      RIKEN Accel. Prog. Rep.

      巻: 54 ページ: in press

    • 査読あり / オープンアクセス

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公開日: 2021-12-27  

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