研究課題
本研究は、腫瘍内の局在の異なる放射線内照射療法(RI内用療法)薬剤を組み合わせることで腫瘍内の放射能の分布が均一になることにより抗腫瘍効果を高めることを発想して、新規なRI内用療法戦略の創造を目的とする。そこで、本研究では癌細胞αVβ3インテグリン、血管新生及び低酸素環境を同時標的としたRI内用療法薬剤の組み合わせる効果を検討する。本研究計画実行の初年度にあたる平成30年度は、αVβ3インテグリンを標的としたベータ線放出核種であるCu-64標識RaftRGDペプチド(64Cu-RaftRGD)と腫瘍内低酸素環境を標的とした64Cu-ATSMを用いた新しい併用治療コンセプトの実証を行った。αVβ3(+)U87MGヒトグリア芽細胞腫細胞をヌードマウスの皮下に移植し、腫瘍モデル動物を作成した。キレート剤cyclamを導入したRaftRGDとATSMのCu-64放射性標識は、我々の確立した方法に従って実施した。64Cu-RaftRGDと64Cu-ATSMの混和液をHPLCまたはTLCにより分析し、これらの2つの薬剤の同時投与ができることも確認した。そして、腫瘍の放射能の分布、取り込み量及び治療効果を検討した。その結果、64Cu-RaftRGDと64Cu-ATSMの併用投与は、単独に比べ腫瘍内放射能分布が均一になれることが確認された。一方、腫瘍への放射能集積値が低くなっても、併用治療は有意な延命効果を示すことを明らかにした。これらの結果より、腫瘍内の局在の異なるRI内用療法薬剤を組み合わせることで腫瘍内の放射能の分布が均一になることにより抗腫瘍効果を高めることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
研究はPETイメージングとRI内用療法の両方に適した放射性薬剤として有望であるαVβ3インテグリンを標的としたCu-64標識RaftRGDペプチド及び腫瘍内低酸素環境を標的とした64Cu-ATSMを用いた、予定通りの実験ができたためである。
昨年度から得られた結果を基にして、今後申請者らは、癌細胞αVβ3インテグリン、血管新生及び低酸素環境の同時標的をベースにし、数種の担癌モデルにおける腫瘍の放射能分布、線量分布、治療効果、メカニズムなどの評価を行う予定である。
昨年度は、実験に集中していたため、その他として予定していた額も実験に必要な消耗品の購入に回した。
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EJNMMI Research
巻: 8 (1) ページ: 54
10.1186/s13550-018-0407-3