研究課題/領域番号 |
18K07776
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
金 朝暉 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 分子イメージング診断治療研究部, 主任研究員(任常) (70324150)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 放射線内照射療法 / RI内用療法 / 併用治療戦略 / 腫瘍内放射能分布 / αVβ3インテグリン / 血管新生 / 腫瘍内低酸素環境 |
研究実績の概要 |
我々は、腫瘍内の局在の異なる内用療法薬剤を組み合わせることで腫瘍内の放射能の分布が均一になることにより抗腫瘍効果を高めることを発想して、新規なRI内用療法戦略の創造を目的とする。本研究初年度である2018年度は、BALB/cヌードマウスのU87MG(ヒトグリア芽細胞腫)皮下腫瘍モデルにおいて、αVβ3インテグリンを標的としたベータ線放出核種であるCu-64標識したRaftRGDペプチド(64Cu-RaftRGD)と腫瘍内低酸素環境を標的とした64Cu-ATSMを用いた新しい併用治療法のProof of Conceptを実証した。2019年度は、αVβ3インテグリン(+)OVCAR-3およびIGR-OV1ヒト卵巣がん細胞、および、αVβ3インテグリン(-)HuH-7ヒト肝癌細胞をBALB/cヌードマウスに移植し、皮下腫瘍および腹膜転移モデルを作成した。又、前年度から得られた結果を基にして、癌細胞αVβ3インテグリン、血管新生および低酸素環境の同時標的をベースにし、これらの担癌モデルマウスを用いた体内動態分布実験、吸収線量の測定、腫瘍内分布の比較、経時的なPETイメージング、および、治療有効性と毒性などの評価を行った。そのうち、卵巣がん腹膜転移モデルマウスを用いて、64Cu-RaftRGDの投与法、すなわち静脈内と腹腔内投与との比較検討も行った。その結果、64Cu-RaftRGDの腹腔内投与によるモデルマウスの卵巣がん腹膜転移のPETイメージングに成功した。また、64Cu-RaftRGDの腫瘍への取り込み量と腫瘍サイズとの間には有意な負の相関関係が認められた。腫瘍切片を用いた腫瘍内分布の比較について、上記のいずれの腫瘍モデルにおいても、64Cu-RaftRGDと低酸素マーカー(Pimonidazole)を用いて免疫染色された低酸素領域とは明瞭に異なる分布パターン、および、空間的に相補的な局在関係を示した。今後さらにデータの解析と考察を進め、結果をとりまとめて、成果を発表する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
集中的に計画通りに実験を行ったためである。
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今後の研究の推進方策 |
64Cu-ATSMの腫瘍内分布が腫瘍モデルによって予想と異なったことから、64Cu-ATSMの腫瘍集積メカニズムを明確に示したうえで、64Cu-RaftRGDと64Cu-ATSMとの併用療法のrationaleを検討していく必要がある。一方、64Cu-ATSMの代わりに新規の腫瘍低酸素標的放射性治療薬剤の開発が必要となる。今後はCu-64をアルファ線放出核種であるAc-225に変えてRaftRGDを標識し、新規な治療薬剤の開発をする予定である。また、新規の腫瘍低酸素標的又はそれに関係する酸性領域を標的とした放射性治療薬剤の開発についての検討をする。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験用細胞株は初年度に購入した。又、予定の成果発表はこれから行う。
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